「うちは月に1度、ホワイトボードを使って家庭内ミーティングをしています。毎月、議題を決めてみんなで意見を言い合ってボードに記入し、ちゃんと“議事録”も取っています。このミーティングをするようになってから、家族の間で感情的にけんかすることがなくなりました」
上野家のように家庭内ミーティングを取り入れる家庭が増えている。その理由を、家族問題研究家の池内ひろ美さんが分析する。
「共同体が弱体化して都市に進出する人が増えたこともあり、家族の情緒的なつながりが昔に比べて薄くなっています。このため以前なら黙っていても何とかなったことも、家庭内ミーティングで“自分はこんなことがしたい”“これだけのお金が必要”などとプレゼンテーションして納得してもらわないと物事がスムーズに進まない。上手に家族をマネジメントしないと夫婦仲が悪くなったり子供が問題行動をするなどで、家族がバラバラになってしまうんです」
しかし、人はお互いにマネジメントし合うビジネスライクな関係だけでは生きられない。家族が情緒的なつながりを失ったからこそ、人は「温かい関係」を会社に求めるようになったのだ。
それは、女性が仕事にやりがいを求めて社会進出する前の家族と全く同じではない。1980年にリクルートが創刊した女性向け求人情報誌『とらばーゆ』の初代編集長、くらたまなぶさんが言う。
「会社は今、アナログで温かい雰囲気に戻ったけれど、それは女性を見たら“お茶!”とこき使う亭主関白ではなく、男女平等共働きの新しい家族なのです」
「OL」という言葉の誕生から55年、やりがいを追い求めて旅に出た彼女たちがたどり着いたのは、会社という新しい家だった。
※女性セブン2018年5月3日号