こうした炎上案件が出ると広告代理店やPR会社の人からは「これは知名度を上げるための役割を果たしたから成功」とか「これは狙ってやっていた」といった意見も出ますが、これらは負け惜しみです。広告に関しては炎上してもロクなことはありません。
「一部のクレーマー気質の人が騒いでいるだけだ」みたいな擁護派が現れることもありますが、こんなことで擁護してくる人を味方だと思っても仕方がない。広告の宿命として、とにかく誰も不快にさせない方がいいのです。また、結果的に誰かが不快になるにしても、その人数が少なければ少ない方がいいし、ヤフーニュースのトップに今回の件とそれを謝罪するキリンビバレッジのニュースが出ない方がいいのです。
「結果的に知名度が上がったからキリンの勝ちwww」みたいに書く人はいますが、キリンという会社の体質を考えた場合、多分「勝ち」なんて思っていない。本気で「あっちゃー、やらかした……配慮が足りなかった」と思っているのではないでしょうか。私自身、かつて博報堂にいた時に同社を担当していた経験もありますし、その後も取材等で担当者に会うことはありますが、本当に誠実な社風です。今回の件で社内に喜んでいる方がいるとは到底思えません。
◆広告の成功指標が「好感度」から「いいね!」数に変化
企業が一回炎上をやらかすと、その後はそれほど炎上することはありません。詳細は記しませんが、ここ数年でもルミネ、AGF、宮城県庁、資生堂、サントリーなどがジェンダー関連の広告で炎上しましたが、その後は炎上していません。それだけ炎上というものに企業は気を遣っているわけで安易に「炎上マーケティング」などと言うのは企業に対して失礼ですし、広告ビジネスを分かってないことを自らさらけ出しているだけです。
とはいっても「午後の紅茶」ですよ。すでに確固たるブランドを築いているというのに、なんのためにこのような炎上リスクの高い案件を形にしたのでしょうか。そこには外野からは窺い知れることのない深いマーケティングデータに基づいた分析があるのでしょうが、正直、意味が分からない。