一つ考えられるのは昨今の「ネットのPR施策はバズらなくてはダメ! SNSで拡散してナンボ!」という風潮の蔓延にあることでしょう。かつての広告の成功指標といえば、「CM総研」が発表する「CM好感度ランキング」で上位に入ることでした。しかし、今はRT(リツイート)の数やシェア数、「いいね!」の数に指標が移っています。となれば、これらの数値を獲得すべく宣伝部の担当者と外注先のクリエーターは目標設定をします。内輪の打ち合わせで盛り上がっているうちはそれでいいのですが、何しろこれらのPR施策を目にするのは口うるさい&何かといちゃもんをつけたいネットユーザーの皆様方。

 この方々の逆鱗に触れたらもう終了です。だからこそ、炎上の恐れがあるような企画を「おもしろそうだね!」「バズりそうだね!」みたいな「+(プラス)」の発想で通してはならない。むしろ「炎上しないかな?」という「-(マイナス)」のポイントを見つける作業をした方がいいんですよ。これがネットPRでもっとも重要なポイントです。

「それだったら面白い企画なんてできないじゃん!」と反論したい方もいるかもしれませんが「RTをたくさん獲得するのと、無駄な炎上で“炎上史”に残ったうえにこれをやった担当者が深く傷つくことのどちらを取りますか?」と私は言いたい。ネットの反応をあまりナメないでほしいのです。私のようにネットの炎上を見続け、レポートするのが仕事な人間も、今回のキリンビバレッジの件はデータベースとして保存し、今後もケーススタディとして何度も活用することになります。

 その一方で、企業にとって重要なのは、この企画を推進した現場の担当者を会社として守ることでしょう。今回、4月26日に公開したこのツイートは5月1日まで燃え続けたのに削除までに4日かかりました。もしかしたら、ウェブコンテンツの公開と削除に関する最終決裁をする上司が大型連休のために連絡を取ることができなかったのかもしれません。炎上状態にあったことは、担当も当然知っていたはずです。

 それなのに4日もかかったのは、上司の決裁が下りていなかった、という可能性も(勝手な憶測ながら)あるわけで、ネットで炎上した場合は担当者レベルですぐに削除を可能にすべきです。あとは会社内で炎上した社員を責めることなく、皆で守る体制を作ってあげなよ、と私は切に願っております。炎上は良くないですが、その後炎上しないためにその人を責めないであげてくださいよ。

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