こうして半ばなりゆきで母の人生初のひとり暮らしが始まったのだが、恐れたとおり認知症は悪化。激やせし、コンロの火で前髪も焦がした。
その後約1年、私は罪悪感で押し潰されそうだった。娘の受験が終わった時、もう施設を探すほかないと、ようやく心を決めた。
折しもその頃、増え始めていたのがサービス付き高齢者向け住宅だった。バリアフリーのワンルームを賃貸契約し、介護職による安否確認と生活相談が受けられる。デイサービスや生活援助なども使える。
一般住宅に住むのと同じ環境で、安心が少しプラスされる感じだ。施設といえばガチガチに管理される一方だと思っていたので、この適度な自由と安心感は、自立意欲のある母にも、施設に抵抗感のある私にもぴったりだった。
最終的には母が今、住んでいるサ高住を選んだ。私の家が近く、好きなだけ自室のお風呂に入れること、食堂で住宅内の人たちと食事できることが決め手だった。そして驚いたことに、サ高住に引っ越した途端、激しかった認知症が落ち着き、朗らかな母に戻ったのだ。
今のところはこの転居、大成功である。もちろん日々、母の状態は変わっていく。再び思案すべき時は来るだろう。手探りの介護はこれからも続く。
※女性セブン2018年5月10・17日号