芸能

かくして無軌道なタレントが生まれる芸能界というシステム

「そんな人には見えない」ことが最大の罠

 何かの犯罪が起きたとき、容疑者を知る人のコメントとしてよく登場するのが「そんな人には見えなかった」である。逆にいえば、意外な人が犯罪者になることは珍しいことではない。身近な人でもそうなのだから、直接、知ることがない有名人であればなおさらだ。ところが、芸能人の場合は、ドラマなどで演じる通りの善人のはずと思われることがある。この思い込みを利用した犯罪や、犯罪まがいの行為について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 性犯罪やセクハラなどが明るみに出るたび、被害者に落ち度があった、何か別の目的のための作為が働いているという思い込みを声高に主張する人が後を絶たない。加害者が社会的地位や知名度を持っている場合はその傾向がとくに強く、インターネット、SNSの普及にあわせるかのように、みずからの認知の歪みを、被害者を貶めてまで正義だと強弁する人がいなくならない。

 高級官僚であれ、人気の芸能人であれ、まったく失敗しない人生を歩む人はいない。それに、彼らが世間に見せているのは仕事の上での顔だけ。人間は仕事や外向けの顔だけで成り立ってはおらず、もっと複雑なものだ。ところが、一面しか見ていない人物のことを、なぜか人間性すべてを知っているかのように錯覚してしまう人たちがいる。とくに、イメージをコントロールすることも仕事の一つである芸能人については、惑わされる人が多い。

 その幻惑のテクニックが、タレントやアーティスト、俳優としての技量の上で成立しているのであれば、まだ歪みは小さいだろう。だが現実には、彼らの動向を報じるメディアの「忖度」と、忖度されるのを当たり前と考える一部の芸能人や芸能事務所、それを拒否できないメディアという、堂々巡りの構造的な問題が存在するのだと大手紙の芸能記者が指摘する。先日、未成年への強制わいせつで書類送検された、TOKIOの山口達也をめぐる報道にも、その過剰な「忖度」が浮かび上がっていた。

「彼が”容疑者”ではなく”メンバー”と報じられたことについては、書類送検だけで逮捕になっていないことなど複数の解説がありましたが、”メンバー”をつける意味が分からない。今回、よく説明されているルールの通りに報じるなら、同じ事務所で以前、現行犯逮捕されたタレントの事件でも”メンバー”となっていたのはおかしい。結局、ほとんどのメディアが芸能事務所に”忖度”したのは間違いないでしょう。同事務所に所属するアイドルは、パフォーマンスの力があって、起用すれば高い数字(視聴率や販売数)が取れる人が何人もいる。だから、事務所に嫌われるような報道はしたくない」

 4年前、大手芸能事務所に所属していた小泉今日子が「私みたいに事務所に入っている人間が言うのもなんだけど、日本の芸能界ってキャスティングとかが”政治的”だから広がらないものがありますよね」と雑誌インタビューで発言して話題になったことがある。日本ではテレビ番組や映画など、芸能人を必要とする企画が、出演者ありきで決定されることが少なくないため、事務所の政治力によって誰が出演するかが決まることが多い。

 このような方法で演者を決めていると人材の新陳代謝が難しいため、海外の映画やドラマでたびたび見かける、オーディションによって抜擢された新人が力を発揮して人気者になるという現象が、日本では滅多に起きない。政治的なパワーバランスで様々なことが決まってゆく。そのバランスを崩さないため、メディアは過剰な”忖度”をしつづける。たとえば、新人が過剰な持ち上げられ方をするときには、一足先にその力を知るメディア関係者にファンを増やしていることもあるが、実は事務所の政治力を背景にした”忖度”が働いていることも少なくない。とくにトラブルが起きたとき、それは効力が発揮されている。

「事務所のタレントがトラブルを起こしたとき、ニュースにしないでほしいとにおわせることはよくあります。はっきりお願いされなくても、担当者が忖度して口をつぐむ。そうすれば、ほとんどのトラブルは公になりません。事務所にとってもメディアにとっても、トラブルを起こしたタレントが連続ドラマやCMに出ている場合、コトが詳らかになれば金銭的ダメージが大きいとか、事務所やスポンサーの評判にかかわるとか、そんな理由です。きわめて身勝手な理屈ですが」(同前)

 もちろん、そんな勝手な理屈でお願いをする事務所ばかりではない。社会的に許されないことを起こした所属芸能人に対して、厳しい態度で反省と更正を促す事務所もある。ところが、一般的な倫理観や法律よりも、現在のビジネスを継続させるために、自分たちの政治力を駆使する事務所がある。そしてお願いをにおわせ、担当者が忖度をする、といったやりとりが続いたことで、一部の芸能事務所に所属するタレントや俳優は神格化されたともいう。

「本当は何度もトラブルを起こしていても、表向きはスキャンダルの気配すらなかったことにされるため、一部のタレント、アイドルたちはいかにも”きれいなもの”と視聴者や読者に映ります。イメージをコントロールしてもらっていると本人や関係者に自覚があれば、まだよいのですが、勘違いして、何をやっても許されると独自解釈する芸能人が多く作り出されてしまっている側面もある。視聴率や動員数、販売数などの”数字を持っている”彼らに対し、今のマスコミはまったく批判や検証をしません。発表される内容を、そのまま報道するだけです」(同前)

 こうした互助関係が、さらなる歪みを呼び込む。キー局の人気番組APがその実情を明かす。

「マスコミと事務所が作り上げた芸能人の幻に憧れる、判断力の乏しい若い子達が、食い物にされることがある。駆け出しのモデルやタレントたちは有名な芸能人に近づけたり、一緒に仕事ができるだけで大いなる自信にもなりますが、言うことは何でも聞くような状態になることも。ひどい場合になると、酒を飲まされて性虐待を受けても”被害”とは感じないどころか、誇りや勲章とすら感じるほど普通の考え方ができなくなってしまう。気づいたときにショックを受けて立ち直れなくなることも」

関連記事

トピックス

阪神の主砲・佐藤輝明はいかにして覚醒したのか
《ついに覚醒》阪神の主砲・佐藤輝明 4球団競合で指名権を引き当てた矢野燿大・元監督らが振り返る“無名の高校生からドラ1になるまで”
週刊ポスト
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《眞子さんが見せた“ママの顔”》お出かけスリーショットで夫・小室圭さんが着用したTシャツに込められた「我が子への想い」
NEWSポストセブン
大ヒット上映を続ける『国宝』の版元は…(主演の吉沢亮/時事通信フォト)
《映画『国宝』大ヒット》原作の版元なのに“製作委員会に入らなかった”朝日新聞社員はモヤモヤ  「どうせヒットしないだろう」とタカをくくって出資を渋った説も
週刊ポスト
米マサチューセッツ州で18歳の妊婦が失踪する事件が発生した(Facebookより)
【犯人はお腹の子の父親】「もし私が死んだらそれは彼のせい」プロムクイーン候補だった18歳妊婦の失踪事件「# findKylee(# カイリーを探せ)」が最悪の結末に《全米に衝撃》
NEWSポストセブン
不倫の「証拠」にも強弱がある(イメージ)
「不倫の“証拠”には『強い証拠』と『弱い証拠』がある」探偵歴15年のベテランが明かすまず集めるべき「不貞の決定的証拠」
NEWSポストセブン
違法賭博胴元・ボウヤーが激白した「水原と大谷、本当の関係」
《大谷から26億円送金》「ヘイ、イッペイ。翔平が前を歩いてるぜ」“違法賭博の胴元”ボウヤーが明かした「脅しの真相」、水原から伝えられていた“相棒の素顔”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
《父・水谷豊は1人娘の背中をそっと押して》女優・趣里と三山凌輝、結婚発表の直前まで続いていた母・伊藤蘭との「家族会議」
NEWSポストセブン
大谷の口座から26億円を受け取った胴元・ボウヤーが独占取材に応じた(Aflo)
《独占スクープ》大谷翔平の26億円を騙し取った“違法賭博の胴元”が告白!「水原一平、エンゼルスとの本当の関係」【蜜月ポーカー写真の存在】
NEWSポストセブン
学校は誠実な姿を生徒たちに見せることができるだろうか(HPより)
《ゴルフの名門・沖学園高等学校で複数の暴力事案が発覚》激怒した寮長の投げた金属製コップが生徒の目元に直撃…流血で数針縫うケガ
NEWSポストセブン
今年もMVPの最有力候補とされる大谷翔平(写真/Getty Images) 
《混迷深まるハワイ別荘訴訟》「大谷翔平は購入していない」疑惑浮上でセレブ購入者の悲痛、“大谷ブランド”を利用したビジネスに見え隠れする辣腕代理人の影
女性セブン
「部員は家族」と語ってきた中井哲之監督だが…(時事通信フォト)
“謝罪なし対応”の広陵高校野球部、推薦で入学予定だった有力選手たちが進路変更で大流出の危機 保護者は「力のある同級生が広陵への進学をやめると聞き、うちも…」
週刊ポスト
還暦を過ぎて息子が誕生した船越英一郎
《ベビーカーで3ショットのパパ姿》船越英一郎の再婚相手・23歳年下の松下萌子が1歳の子ども授かるも「指輪も見せず結婚に沈黙貫いた事情」
NEWSポストセブン