「栃ノ心の大関昇進のハードルが低くなっているのは、『大関・高安の横綱昇進』とセットで考えられているからだろう。高安が序盤で勝ち星を重ねれば、協会は“綱取りムード”を盛り上げるつもりです。高安が昇進した際に“一人大関”になってしまうことを避けるために、栃ノ心の大関獲りのハードルも低くしておく必要がある」
高安は初場所が12勝3敗で栃ノ心に次ぐ準優勝。続く春場所も12勝3敗で横綱・鶴竜に次ぐ準優勝(魁聖と同成績)となった。2場所連続で鶴竜を破ったこともあり、今場所で賜杯を抱けば、横審の内規にある昇進条件の「2場所連続優勝またはそれに準じる成績」をクリアしたと判断される可能性が高いというのだ。
「昇進基準はあくまで原則。これまでも、協会の“さじ加減”でいくらでも変わってきた。第60代横綱・双羽黒は、大関として2場所連続準優勝しかしていないのに、横綱に推挙されて昇進した。ここ最近も、鶴竜は『優勝同点(決定戦で敗退)と優勝』、稀勢の里は『準優勝と優勝』と、“準じる”を拡大解釈した昇進が続いている」(協会関係者)
高安は、横綱・稀勢の里と同じ“ガチンコ部屋”の日本人力士。協会がイメージ回復の新たな旗印として期待を寄せ、昇進のために“高い下駄”を用意してやっているという見方である。
「高安が昇進すると、大関は豪栄道1人になる。角界では、“横綱はゼロでも構わないが、大関は少なくとも東西に1人ずつ必要”とされている。実際、これまで『大関不在』『1人大関』時代には、横綱が『横綱大関』として番付上で兼務し、直後に“目安”を満たさない昇進によって新大関が誕生している。しかも豪栄道は大関在位22場所でカド番6回という不安定な成績。とても『1人大関』を任せられない」(前出・ベテラン記者)
高安&栃ノ心のW昇進が、協会にとっては最も都合がよいシナリオなのである。
※週刊ポスト2018年5月18日号