「保育科は高校のように午前9時から午後5時まで授業がびっしり。課題も多いし、試験も大変でした。若い頃なら『課題忘れちゃった』とか言えるけど、資格を取るためにこの年で大学に入っているのだから、泣き言なんて言えない」(るりさん)
「授業自体は楽しくて、90分があっという間でした。でも、どうしても暗記力が落ちていますから、全然頭に入らなかった。試験前は『もうダメだ』って思うんですけど、必死にノートに書き続けていると、ギリギリでスーッと頭に入ってきて乗り切れました(笑い)。不思議よね」(百合子さん)
勉強以外にも2人の前には“壁”が存在した。るりさんは年の離れた同級生に初めは困惑したという。
「最初は若いクラスメートの中で1人年をとっていて疎外感を感じていました。でも『字が上手だね』とか些細なことでも自分から話しかけると、娘のような年代の子たちとも意外と仲よくなれてビックリしました」(るりさん)
百合子さんは大学のシステムを理解するまでに苦労した。
「授業の登録の仕方、休講情報の入手法など、全然理解できなくて…。いつも娘に助けてもらっていました」(百合子さん)
「学校では完全に私が保護者代わりでした(笑い)」(るりさん)
だが、百合子さんもるりさんに頼ってばかりではなかった。年の功からか“味方”も多かった。百合子さんが言う。
「おばあちゃんより年上だから安心だったんでしょう。みんな仲よくしてくれましたよ。今の子はオープンで、おつきあいしている男性に関しても『えっ、そこまで話すの!?』と思うことも話してくれる。お母さんとけんかしたという子に、母親としての立場から『それはお母さんは心配だと思うよ』とアドバイスしたこともありました」
当初はLINEができない百合子さんに代わって、るりさんが学友からの連絡を受け取っていたが、いつしか百合子さんが直接メールでやりとりするほどまでになっていた。
「グループごとの課題発表の際には、私の家にみんなで集まって準備をしたりしました。本当に楽しかったですね」(百合子さん)
◆「卒業させたい」と家族が一致団結
そんな母に対してるりさんはこう話す。
「母は『何かあったら助けてあげたい』と周りに思わせるタイプ。私のことは誰も助けてくれないけど…」
周囲の支えもあって、70代で訪れた遅い“青春”を謳歌する百合子さん。だが、1年次の後半に始まった「実習」が彼女を悩ませるようになる。