2020年の東京五輪開催まであと800日。インフラ整備や大会運営を巡ってさまざまな課題が取り沙汰されているが、実はほかにも未解決の「重大案件」が残されている。それは「選手の食事をどうするか」だ。
東京五輪・パラリンピックには世界から合計2万6000人以上の選手・関係者が集まるが、いうまでもなく、アスリートにとって食事は極めて重要なものだ。中村調理製菓専門学校校長の中村哲氏が語る。
「各国の選手の満足を得るためには、栄養学的な要素とともに、味にも一定以上のクオリティが求められます。どんな料理を提供できるかは、日本という国家の威信にもつながります」
1964年の東京五輪は約5000人の選手・関係者の食事を、全国から集まったおよそ300人の料理人が賄った。今回の東京五輪では、選手村だけでも計200万食、料理人は約1000人必要ともいわれる。
それを束ねる「総料理長」は重大な責任を負うとともに、「日本の料理人のトップ」という最高の栄誉を手にすることになる。
大会組織委員会は、「総料理長というポストを設ける計画はございません」(戦略広報課)というが、前出の中村氏はこんな見方をする。
「今回は1964年大会と違い、大手外食産業に委託する可能性がありますが、料理の味や見た目、レシピのチェックなどをする専門家は必要です。アドバイザーなのか監査役なのか、1964年大会と違う形の“総料理長”というポストが用意されるべきではないでしょうか」
そのポジションにいま、「最も近い」と目されているのが、帝国ホテル総料理長の田中健一郎氏(67)だ。