高校卒業後、帝国ホテルに入社し、51歳で総料理長に就任した田中氏は、2005年にフランスの農事功労章シュヴァリエを受勲、2015年には厚労省認定「現代の名工」に選ばれた。さらに昨年は帝国ホテルのシェフとして初めて、文化庁長官表彰を受賞している。「帝国ホテルの鉄人」と称される、日本料理界を代表するシェフだ。
大会組織委員会は昨年3月、専門家や有識者からなる「飲食戦略検討会議」を設置。選手村の料理について「栄養管理や日本食による文化の発信」などをテーマに議論を重ねてきたが、田中氏は同検討会議の委員を務めている。
「田中シェフはインタビューで、世界の期待に答えるためには『“日本らしさ”を出していくことが重要』と語り、東日本大震災の被災地の食材についても『むしろ安全。どんどんアピールすべきだ』と強調するなど、かなり意欲的です。関係者の間からも『帝国ホテルは大量の食材を扱うことやオペレーションに慣れている。安心して任せられるのは田中さんしかいない』という声が上がっている」(全国紙記者)
だが、まだ「田中氏で決まり」というわけではない。彼には強力な「ライバル」が存在するからだ。
◆「万全の態勢で五輪に臨む」
田中氏の「対抗馬」と目されているのが、高級フレンチレストラン『オテル・ドゥ・ミクニ』のオーナーシェフ、三國清三氏(63)である。2003年に田中氏と同じ「シュヴァリエ」を受勲、2007年に「現代の名工」に選ばれるなど、経歴的には遜色がない。