《当時、三國君はまだ二十歳の若者、しかも帝国ホテルでは鍋や皿を洗う見習いだったため、料理を作ったことがなかった》《では、なぜ私は三國君を推薦したのか。彼は鍋洗い一つとっても要領とセンスが良かった》
努力の人とセンスの人──。帝国ホテルの厨房で1964年東京五輪料理長の教えを受けた対照的な2人が、半世紀の時を経て五輪総料理長の座を競っているのだから、因縁を感じさせる。
「三國氏は2017年10月に『(選手村の料理は)100%冷凍食品でいこう』と委員会に提案したことを明かしています。その発言を意識してか、田中氏は今年1月、日刊スポーツの取材に『大量提供と比べ、顔が見える客に日々、相対で料理を出してきたシェフや板前らの匠の技や知見が、東京大会の食を成功させるうえで必要不可欠』だと語っています」(飲食業界関係者)
両者に真意を問うと、こんな答えが返ってきた。
「何らかの要請があればご協力させて頂けることがあるかもしれませんが、弊社としては何も存じ上げておりません」(田中氏に代わり、帝国ホテル広報課が回答)
一方、三國氏の広報担当者も「本人に確認したところ、まだ白紙の状態でお答えできることがないとのことでした」と答えた。
2人のシェフによる、「頂点」を目指す熾烈な戦い。かなり白熱しそうだ。
※週刊ポスト2018年5月25日号