落ち着いて見えるけどママはみんな20代や30代(昭和34年)
オバ:最初に取った大きな賞は?
齋藤さん:中学3年のときの群馬県主催の『赤城山写真コンテスト』の最優秀賞。このときの賞品が映写機で、父もすごく喜んでくれました。
オバ:高校では写真部の部長でしたよね? 女子高だから「女のくせに」とは言われなかった?
齋藤さん:写真部が写真コンテストで賞を取ると、引き伸ばし機やらの備品が学校に贈られるから、高校の先生も、私が授業に出ないで写真を撮りに行くことを黙認してくれ、そのうち「撮り終わったら何時限目からでもいいから、学校に来いよ」と。
オバ:今なら、「あの子ばっかりズルい」とか、騒ぎになるね。
齋藤さ:えへへ。そのうちコンテストで入賞するコツがわかってきちゃったんですよ。
オバ:たとえば?
齋藤さん:悪天候。雨、雪、嵐の日はカメラを持って町にすっ飛んで行きました。カメラ小僧たちは天気のいい日に撮りたがるけど、悪天候の日は外に出ないから、入賞の確率がグッと上がる。
あとは子供。私は「何して遊んでるの? 撮らせて~」と遊びに交ぜてもらいながら撮るから、子供たちが身構えないの。それを「女だから撮れる」などとよく言われました。
面白かったのは、当時、私がコンテストで賞を取ると、「女に負けた」と悔しい思いをしていた男の人がずい分いたようで、彼らと先日、60年以上の歳月を経て再会したんです。入選常連者のほとんどはプロのカメラマンになって、活躍した後、引退しているのに、「あの齋藤利江が今頃写真集なんか出して」だって(笑い)。本当に人生って何があるかわからないですね。
◆運動会でスナップ写真を撮って、実費で焼き増し
オバ:おお、昔懐かしいパン食い競争。今はむき出しのパンは不潔だとか言って、ビニールに入れてあるそうだけど…。
齋藤さん:糸で吊るしたアンパンを口でくわえて取って走る。たったそれだけなのに、運動会の盛り上がり種目でした。どうにかして食べようとするその姿がおかしくて、みんなお腹を抱えて笑ったもの。
オバ:母親は、運動会にスーツ? 髪も前日にパーマ屋さんでセットしている。そういえばずい分後まで、大人のカジュアルってなかったのよね。普段着とよそゆき。
齋藤さん:人が集まる運動会は、よそゆき。母親は一張羅のスーツで絶対にスカート。この日のために自分で縫った人も多かったのよ。