子供の運動会は親も張り切った(昭和34年)
オバ:秋晴れの日に万国旗がはためき、軽快なあの音楽が流れてくると、みんな高揚してね。保護者席はグラウンドの周囲に縄を張って、地べたにござや新聞紙を敷く。お昼になると子供たちはいっせいに親のところにかけて行って、重箱に詰めたお稲荷さんやのり巻きを食べたっけ。
齋藤さん:騎馬戦、組体操は、今では禁止されたりしてるけど、いっぱい練習したのか、それとも子供の体のつくりが違うのか、けがする子を見たことがない。
オバ:この裸の子たちは?
齋藤さん:「それ、行くぞ。1、2の、3」。渡良瀬川で声のする方に近づいて行くと、ふんどし姿の大きな子が小さい子を渡良瀬川に投げ込んでいたの。投げ込まれた子はキャッキャッと声を上げて喜んで、次に投げ込まれたい子が控えている。海なし県の群馬県ならではの夏の川遊びね。
──しかし、こんな素敵な写真を40年もの間、齋藤さんはないものと思っていた。結婚後、コンテストに応募して入賞したことが父の怒りを買い、ネガは全部捨てると言われて。
それが、齋藤さんが還暦になった年に偶然見つけたクッキーの缶に、父のていねいな字で撮影日時と場所が書かれ、眠っていた。このネガが日の目を見るまでの40年間。カメラマンとしては生きなかった、そして生きられなかった齋藤さんの波乱の人生はさらに続く。
◆「三丁目写真館」展は5月末日まで小学館本社1階ギャラリーで開催中
◆齋藤利江 写真展『三丁目写真館 ~昭和30年代の人・物・暮らし~』(東京都中央区銀座2-9-14 1F写真弘社内 a´ギャラリー・アートグラフで6月1~7日)
◆『三丁目写真館 ~昭和30年代の人・物・暮らし~』(写真・文/齋藤利江、小学館刊、1944円)
※女性セブン2018年5月31日号