そうした風潮に憤るのはコラムニストの小田嶋隆氏だ。
「“みんなで仲良く”が幸せだという同調圧力にはうんざりしています。この傾向は、テレビや雑誌で『無縁社会』という言葉が流行り始めた2010年頃から顕著になりました。独居老人や、近隣のコミュニティと疎遠な人をすべて“寂しい人”“悲しい人”と決めつける風潮が目立ち始めた。
ひとり暮らしでも日々の生活に喜びを見出し、幸せに生きている高齢者は多いはずです。それなのにメディアは“孤独は人としてのコミュニケーション能力が低い証拠”といわんばかり。寂しさを紛らわせるために無理をして人との関わりを持つことのほうが、よっぽど惨めなのではないでしょうか」
孤独本ブームは、そうしたステレオタイプな「幸せな老後」イメージへの反発から生まれたものなのかもしれない。前出・下重氏がいう。
「会社時代の同僚や昔からの友人との間にしか“生きる世界”がないというのは、あまりにも寂しい。歳をとってからは人間関係に一喜一憂するより、自分の内面に向き合う時間をつくるべきです。
『孤独』と『寂しさ』はまったく別物。孤独を愉しむことを知っている人は、ひとりでいられる時間に喜びを感じ、人生をより愉快に過ごせると思うのです」
※週刊ポスト2018年6月1日号