芸能

映画版『終わった人』原作者が語るヅラ投げ捨て描写の凄さ

若く保つには恋をするに尽きると語る舘(撮影/矢口和也)

 定年を迎え、“終わった人”扱いをされる60代男性を中心に、シニア世代の悲哀と夫婦の日常をユーモアたっぷりに描く映画『終わった人』(6月9日公開)。主人公・壮介を演じた舘ひろし(68才)と原作者の内館牧子さん(69才)の特別対談をお送りする。

 岩手の進学校でラグビー部のキャプテンを務め、東大へ進学して大手銀行へ就職した壮介。周囲の期待を背負い、虚勢を張ってきたが、定年後に故郷の盛岡へ帰省して仲間と飲んでようやく腹を割り、自らの“輝いていない”境遇を語り始める。

舘ひろし(以下、舘):再就職して失敗してしまったことや、妻に家を追い出されたことなどを壮介が打ち明けると、同級生はみんな親身になって慰めてくれた。そこで仲よしの二宮(笹野高史・69才)が「60過ぎたらみんな一緒だよ」と、かぶっていたかつらをバーンと脱ぎ捨てるんですよね。ぼくはあそこにすべてがあると思う。

 かつらに男の矜持というかプライド、男の背負っているもの、いろいろなしがらみが込められていて、それを投げ捨てた。背負っていたものをすべて捨てる。ぼくはあのシーンがとても好きで、「そのためのかつらだったんだ」と。

内館牧子(以下、内館):なにしろ“かつら、かつら”していたものね(笑い)。それからみんなで岩手伝統のさんさを踊り出すんですよね。さっこら、さっこらと歌いながら。“幸せを呼ぶ=幸呼来”と書いて、“さっこら”。

舘:青春時代ですよ。今まで心にあったものを全部捨ててね。

内館:捨ててから第二ラウンドなのよ。あそこはウルウルしちゃって、原作を超えたなと思った。いいシーンになっていましたよぉ。

舘:ぼくも高校でラグビーをしていて、当時の仲間と年に3~4回は会うんです。壮介は故郷の仲間と話していて気持ちがこもると岩手弁を使うけれど、それはぼくも同じ。標準語でしゃべっていたのが、そのうち「おみゃ~」とか名古屋弁になるんですよ。

内館:おいしいものを食べて「うみゃ~」とか?

舘:言いますよ(照れ笑い)。壮介は淡い恋心を寄せる女性には、近付くためのツールとして最初から方言を使う。その使い分けも、男として共感できました。

内館:壮介はカルチャースクールの受付嬢(広末涼子・37才)に恋をしてから、メタボなお腹がシュッとしちゃって。

舘:スポーツジムで必死に走るんですよね。“若く保つ=恋をする”ということ。これに尽きます。やっぱりいくつになっても恋をしていないとダメですね。ぼくですか? もちろんしていますね(艶っぽく)。

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン