内館:でも、壮介の恋は『マディソン郡の橋』のようにいい結末は迎えさせません。恋だって終わるんです。仕事も終わるし、体も衰える。第一ラウンドをめいっぱい闘ってフラフラになって、終わりをすべて受け入れた先の、次のラウンドをどう闘うか。そこが年を重ねていくうえですごく面白い、人生の醍醐味だと思うんです。
舘:俳優は定年がないので、これまで第二の人生を考えたことはなかったけれど、“定年=終わり”ではなく、次のステージへの前向きな始まりなんだと学びました。
内館:今の60代はみなさん個性的で若くて、その意味ではいちばん生々しい世代というか、成仏しきれていないんですよね。
舘:「まだ若い」、「まだいける」という思いがあるんですね。ぼくも若い頃は“60代=おじいちゃん”のイメージで、「人生は60まででいいかな」と思っていました。でも68までおめおめと生きていると、それなりにまぁ大丈夫かな、なんて(笑い)。
内館:でも仕事でまだいけるかは周囲に決められるものなのね。「定年です。残りの人生をお好きにどうぞ」と、社会に線引きされるのは理不尽なことです。だからこそ、今が引き際という自分のものさしを持っていると、身軽になれる。
横綱審議委員だった時に北の湖さん(第55代横綱、元日本相撲協会理事長・享年62)に聞いたんですけど、引退した理由の1つが体の変化だったんですって。ある日、稽古場の鏡を見たら、昨日まであった胸の筋肉がちょっとだけ落ちていた。他人にはわからない微妙な変化です。でもそこで引き際を悟ったそう。その後に土俵へ上がると「北の湖、頑張れぇ」と声がかかって、「頑張れって言われちゃ、おれもおしまいだな」って。
舘:うぅ~ん、それはすごい。
内館:引き際は自分で設定するものだと思います。残酷にね。そこからまた、力強く次のステップを踏み出せばいいんだから。
──映画では、勝手な振る舞いばかりする夫に妻は、当初、怒り心頭する。だが、本当の意味で夫が第二の人生に踏み出したと悟った時、妻は意外な行動に出る。あなたが同じ問題に直面する日、何をすべきか──来るべき日のためのヒントがここにある。
※女性セブン2018年6月14日号