保守派は安倍氏の決断を期待を持って注視している。藤井氏はこう見る。
「ここで安倍首相が弱腰を見せれば、金正恩氏に舐められて拉致被害者の全員帰国など望めない。それ以上に、拉致問題を政治的に利用してきたという批判にさらされ、被害者家族も失望する。拉致の安倍が本物であることを国民に示すためにも、安倍首相はトランプと決別することになろうと、『これだけは米国の頼みでも譲れない。日本は北が拉致被害者全員を返すまで、1か国でも経済制裁を続けて経済支援は一切行なわない』と必ず言ってくれるはずです」
戦前、列強による日本包囲網の中で国際連盟に乗り込んだ松岡洋右外相は、有名な脱退演説を残して席を立った。
「アメリカ人には、たとえ脅かされても、自分の立場が正しい場合には道を譲ったりしてはならない。対等な立場を欲するものは、対等な立場で望まなければならない」
しかし、いまや対米協調は国益と深く結びついている。安倍首相がどう決断するか。その答えは間もなく国民の前に明らかになる。
※週刊ポスト2018年6月22日号