二人が並んで立つ時も、ほんのわずかだけトランプ大統領は金委員長より前に出る。これも各国の首脳と並ぶ時、トランプ大統領によく見られる行動だ。トランプ大統領はわずかな差であっても他の首脳の後ろに立つことはない。

 ホテル内を移動する際や部屋へと入る時、トランプ大統領は金委員長の背中に手を当てて促したり、行き先を手で指し示してリードして見せた。だが金委員長も、時折大統領の背に手を当てた。年長者を労わっているようにも見えたが、大統領ペースに巻き込まれることがないよう、その背に手を当て彼の動きをけん制したのかもしれない。

 それでも自分が優位だと確信したのだろう。最後にトランプ大統領が見せた握手は、相手の手をぐっと引っ張る独特のものだった。自分が米朝関係の主導権を握ったと、カメラの前でアピールするのが重要なのだ。握手を終えて手を下ろし向かい合う両首脳。謝意とともにトランプ大統領が金委員長の左の肘上を軽く叩いたその瞬間、身体の横で開いていた金委員長の右手がクッと握られたのだ。北朝鮮のトップである金委員長に対して、そのように上から目線で馴れ馴れしい仕草をする人間は今はいないはず。彼の中に無意識のうちに抵抗感や不快感が生じた可能性は否定できない。

 さて、共同宣言の署名では、文書に対する二人の感覚に違いが見えた。文書を交換すると、トランプ大統領はそれを机に置き、発言を始めた。だが金委員長は、その発言を聞きながらも文書を両手に持ったまま眺めたり、大統領の手元にある文書をのぞき込んだりと、なかなか机に置こうとしない。その仕草を見ていると、「歴史的文書に署名する」と自身で述べたわりには、そこへの心理的な重みを感じているようには見えない。セレモニーが重要で文書の中身は二の次、そんな印象すらしてしまう

 史上初という会談を、とりあえずは実現させた両首脳。果たしてこの会談の成果は、いつごろから見えてくるのだろうか?


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