サントリー陣営に最も対抗心を燃やしているのが、飲料業界首位のコカ・コーラだろう。
「ジョージア ジャパンクラフトマン」の商品名で、水出しコーヒーという打ち出しが差別化ポイントになっており、「クラフトボス」には負けられないとの思いが、他メーカー以上に強いはずだ。
ちなみに、筆者も「ジョージア ジャパンクラフトマン」を飲んでみたが、味わいとしては「クラフトボス」同様にライト系だが、水出しコーヒーということもあってか、飲んだ後のスッキリ感は「クラフトボス」以上にあるという印象だった。
コーヒーのライト嗜好は、“缶コーヒー離れ”にも起因している。サントリー食品インターナショナルの幹部は、「缶コーヒーのヘビーユーザーだったブルーワーカーの数が減っている」と話す。
確かに工事現場等々での飲用シーンをイメージすると、オフィスで飲むペット形状の “ちびちびダラダラ”ではなく、コクがあって甘味も強い冷えた缶コーヒーを一気に飲み干す情景が浮かぶ。が、そうした購買層の労働人口が減っているうえ、缶コーヒーの主戦場でもあった自動販売機の台数も減っているわけだから、缶コーヒーが先細るのは自明の理だ。
また、女性が缶コーヒーを苦手にしてきた理由に関しては、
「たとえば、チルドカップコーヒーならストローを挿して飲むので口紅も気にならないことで人気化したうえ、チルドコーヒーは乳業メーカーの主戦場で飲料メーカーはなかなか太刀打ちできなかった」(前出の宮下氏)
ことも要因に挙げている。また、個人差はあるものの「紅茶はOKだけどコーヒーは苦手」と、コーヒーそのものがNGという女性は少なくない。その点、これまでコーヒーには縁遠かった女性にも、ペットボトルコーヒーのライトな味わいのコーヒーが受け入れられているのかもしれない。
一時期、レギュラー缶からペットボトルコーヒー同様に持ち運びができる、ボトル缶市場にも各飲料メーカーは一斉に参入していったが、従来の缶コーヒーとそれほどコクや甘味は変わらなかった。それがライトな味わいで統一されたペットボトルコーヒーの登場で、缶の市場は今後、ますます縮小が見込まれる。
酸味やほどよい苦みとコクというのがこれまでの、いわば美味しいコーヒーのお約束だったが、ビールの苦みを嫌う若年層が増えてビール離れを起こしたように、従来の美味しいコーヒーという要素は、もはや現在の若年層には通じない時代になったということだろう。
●文/河野圭祐(ジャーナリスト)