歌丸師匠が4歳年上の冨士子さんと結婚したのは21歳の時。駆け出しの落語家で、結婚後は苦しい生活が長かったという。いつも「勝手にヘソクリを貯めて」「あんなオソロシイ妻はいない」などと大喜利でネタにしていたが、本心は妻を想う気持ちであふれていた。
インタビューで口にした“落語家としての矜持”がある。
「若い頃に(5代目古今亭)今輔師匠から『舞台に出てきた時の拍手よりも、終わって下がる時の拍手の方が大きくなければダメだ』と教えられたことが、ずっと胸に刻まれています」
歌丸師匠は恩師の教えを守り、日本中のファンから喝采を受け、落語家人生の緞帳を降ろした。
※週刊ポスト2018年7月20・27日号