◆買い物は生活者の日課“役割”を取り戻す行為
介護予防のリハビリとして北嶋さんが買い物に着目したのは、学生時代に学んだ役割理論からの発想だという。
「人はたくさんの役割を持って生きています。たとえば私なら、会社では社長、家では夫、長男には厳しい父親、末っ子には少し甘いお父さん。これらのチャンネルをその場その場で変えて演じている。
ところが高齢や病気になると、役割が担えなくなったり、周りから役割を奪われたりしがちです。すると、たとえ家族と一緒にいても心は孤立し、健康が損なわれてしまいます。そんな状態から、模擬的でも役割を取り戻すことでリハビリになると考えました」
今の時代、食生活を支えるのは買い物。生活者としては確かに重要な役割だ。
「たとえば今夜、自分が食べたいもの、嫁に頼まれた牛乳1本、孫のおやつ、夫の酒肴でも、自分や誰かのために買うことで、1つの役割を担える。家族や社会の一員という感覚を取り戻せるのです」
生活者としての充足感は、高齢者の生活に張りを持たせ心を健全にするという。
「介護予防や自立支援は、運動・栄養・社会参加の3つが必要。筋肉だけ鍛えてもダメなのです。その点買い物は、体を動かし、栄養摂取に直結し、役割も担えます」
健康寿命を延ばすためにも、こんな買い物の効用を心に留めておきたい。
※女性セブン2018年7月19・26日号