国内

出口治明「現代は『精神の鎖国』。若者は世界を見るべきだ」

明治の実業家たちに学ぶべきことがあるという(出口氏)

 戦前の日本で巨万の富を得た企業家たちの行動力や発想力から、現代日本人の進むべき道が見えてくるのではないか──編著『戦前の大金持ち』(小学館新書)でそう説いた出口治明・立命館アジア太平洋大学学長が、歴史学者の奈良岡聰智・京都大学大学院教授と“歴史から学べるヒント”を語り合った。

 * * *
奈良岡:今回、出口さんの新著『戦前の大金持ち』を読んで、とても印象的だったことがあります。この本に登場する明治期の実業家たちは、それぞれ手掛けた事業も性格も全く異なっています。でも、そこには何か共通の精神性のようなものが感じられますね。

出口:はい。僕も彼らについて調べながら、同じ感想を抱きました。例えば、1920年代のパリで蕩尽の限りを尽くし、「バロン薩摩」と呼ばれた実業家で作家の薩摩治郎八。その彼が贅沢の果てに辿り着いた境地を知ったとき、思い浮かんだのが「ノブレス・オブリージュ」という言葉です。

奈良岡:社会的に高貴な者や財産のある者は、公に対する貢献の義務を尽くさなければならない、といった意味合いですね。

出口:そうです。薩摩治郎八だけではなく、日本の近代林業の基礎を築いた土倉庄三郎、孫文の革命に私財を投じた梅屋庄吉、相場師の山崎種二に至るまで、「自らの持つお金は公のために活かさなければならない」という強烈な意識をそれぞれの形で持っていました。

奈良岡:本の中でもお書きになっているように、明治期というのは、まだ国民国家としての日本のあり方が固まっていなかった時代ですよね。だからこそ、日本という国家のあり方、お金のつくり方、社会や組織と人間とのかかわり方も多様だった。様々なものが流動的で、動きながら固まっていく時代の雰囲気が、彼らの生涯からは確かに伝わってきました。当時の実業家たちが、かなり気軽に海外に出て行くことも特徴的です。

出口:まだ様々な制度が固まっていない時代だからこそ、時代の最先端の動きをキャッチアップしようとする際、彼らは驚くほど意欲的に「外」へ目を向けたのでしょうね。その姿勢は今の時代に生きる僕らにも、大いに刺激を与えてくれる気がします。

関連キーワード

関連記事

トピックス

日本のブライダルファッションの先駆け的存在、桂由美さん
《芸能人も多数着用》桂由美さんが生前嘆いていた「ナシ婚」 ウエディングドレスで「花嫁を美しく幸せにしたい」強い思い
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
小野寺さんが1日目に行った施術は―
【スキンブースター】皮下に注射で製剤を注入する施術。顔全体と首に「ジュベルック」、ほうれい線に「リジュラン」、額・目尻・頰に「ボトックス」を注入。【高周波・レーザー治療】「レガートⅡ」「フラクショナルレーザー」というマシンによる治療でたるみやしわを改善
韓国2泊3日「プチ整形&エステ旅行」【完結編】 挑戦した54才女性は「少なくとも10才は若返ったと思います!」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン