「物事は売れたから成功、売れなかったから失敗と安易に片付けられがちです。たしかに曲の売り上げ枚数、テレビ番組の視聴率は芸能人にとって大事な指標であり、重視されるべきものでしょう。
しかし、物事には流れがあり、結果の裏には必ず過程がある。阿久さんとがっぷり四つに組んだ1年間は田原をより男らしくさせた。フジテレビの前社長である亀山千広氏は映画『瀬戸内少年野球団』を観て、田原の主演ドラマを企画します。これが“びんびんシリーズ”として大ヒットした。阿久さんの映画がなければ、『教師びんびん物語』は誕生しなかった。
ドラマの熱血教師・徳川龍之介は、田原のデビュー当時からの“明るいイメージ”と阿久さんプロデュースで表面化し始めた“男らしさ”が上手く混ざった役でした」
田原と野村宏伸演じる後輩教師・榎本英樹役のコンビはお茶の間に笑いと感動をもたらし、1989年の『教師びんびん物語II』は最終回で視聴率31.0%を獲得。フジ『月9』枠で初めて30%を超えたドラマとなった。
「世の中は、何かしらの結果が出た時、その結果だけに目を奪われがちです。しかし、田原俊彦の芸能人生を振り返った時、阿久悠さんの詞を歌い、映画に出演したことが大きな転機になったのは間違いない。“1980年代の阿久悠”も、もっと再評価されるべきだと思います」(岡野氏)