米ペンシルバニア大学の研究では、抗がん剤が効かず、治療の施しようのない白血病患者30人にCAR-T療法を施したところ、27人の血液がんが完全に消滅した。効果の高さから、米国ではすでに一部で実用化された。内科医で医療ガバナンス研究所の上昌広さんが解説する。
「この治療法はアメリカではすでに承認されていて、とくに白血病の子供への高い治療効果が注目されています。しかし日本では承認申請をしている最中のため、国内の医療機関では受けることはできません」
◆ノーベル賞候補の日本人医師が開発
日本人が開発をリードし、世界中から注目される治療法もある。シカゴ大学名誉教授の中村祐輔医師による「ゲノム解析+免疫療法」だ。
最初にがん細胞の「ゲノム(ある生物を構成するすべての遺伝情報)」を解析して、どの遺伝子が異常を起こしているかを特定する。その遺伝子変異を持つ細胞を攻撃するようにデザインされたリンパ球を人工的に作って、患者の体内に移植し、がん細胞を撲滅する仕組みだ。
「中村医師が開発した『ゲノム解析+免疫療法』は遺伝子をすべて解析する非常に精緻な治療法であり、大きな可能性を秘めています。前述の『CAR-T療法』の進化版と言っていい。世界的にも有名な研究で、中村医師はノーベル賞の候補者でもあります」(上さん)
しかし、中村医師の治療法も日本では「承認」されておらず、一般的な病院では受けられない。
他にも、画期的な治療法として「免疫チェックポイント阻害薬」が注目を浴びている。アメリカでは複数の製品で合わせて、10種類以上のがん治療で承認されているが、日本で承認されて保険が適用されるのは、悪性黒色腫、肺がん、胃がんの一部など8種類のがんに限られる。
「たとえば、食道がんの場合は承認のための治験が終わっておらず、日本でこの薬を使うと保険適用がなく、自費診療になります。この場合、自己負担額として数千万円単位のお金が必要となるはずです」(上さん)
アメリカでは手の施しようのない末期の乳がん患者21人に免疫チェックポイント阻害薬を投与したところ、4分の1以上の患者に効果があり、そのうち2人はがん細胞が縮小、2人は検査でがん細胞が検出されない「寛解」と呼ばれる状態になったとの報告がある。
小林麻央さん(享年34)の命を奪うなど、女性の大敵である乳がんと闘う際の希望となる「夢の薬」だが、日本では乳がんを対象とした治療は承認されていない。
※女性セブン2018年8月16日号