相原:“5時9時”では主人公が社会人なので、キャラクターにより幅を持たすことができたこともありますが、社会の変化も感じます。“5時9時”の人気キャラに、“女装男子”がいるんですが、10年前だったら、「気持ち悪い」と受け入れてもらえなかったと思う。でも今は、新宿や原宿の街を歩けば、たくさんの“女装男子”に遭遇しますよね。
また、“年の差恋愛”も当たり前に受け入れられる。今こそ若い女の子と、うんと年上の男性のカップルが出てくる作品って普通ですけど、昔はドラマでもやらなかったし、読者にも受け入れられなかった。でも、今は、俳優さんでも「格好いいおじさん」が増えてるし、「おっさん好き」も市民権を得ています。
実は昔から年上好きも、たくさんいたと思うんですけれど、公言できる場所がなかったのではないでしょうか。それが、SNSが広まったことによって、『#おっさん好き』と入れると「わたしも」「わたしも」と同じ趣味の人が集まってくる。話しやすくなったんでしょうね。きっと。
――反対に、10年たっても変わらないと思うことは?
相原:10年もたっていれば、いろいろ自由になっているはずなのに、「やっぱり、結婚してたほうがいいよね」「子供もいたほうがいいよね」と、女同士で「透明な囲い」を作り合っているように思えます。
――それはどのような場面で感じますか?
相原:今日たまたま、インタビューに来る途中で寄ったサロンで、隣のお客さんがずっとある男性アイドルのかたの事件の話をしていたんです。20代前半くらいの、キレイな女性たちだったんですが、「あれ絶対女の子の売名だよね」「20時すぎて、男の部屋に行っちゃいけないよね」って盛り上がっているんです。
男性が、「また女が騒いでる」って言うならまだわかるのですが、被害者の、それも未成年の女子高校生を非難する内容を言ってるのが女性なんだ!ということに驚いて…。あと、イケメン俳優が女の子と抱き合っている写真を週刊誌に撮られたという話もしていて、そのお相手について、「すごくかわいかったからOK」って言うんです。
ああ、じゃあかわいくなかったらダメなんだ、とこれもまた驚きました。女性同士でルールを決め、縛りあっている感じがするんですよね。そういうのを聞くと、申し訳ないですけど「ああ、面白いな、どうやって漫画で表現しようかな」って思っちゃう(笑い)。
――この10年で少女漫画そのものをとりまく状況も大きく変わりました。とくに顕著なのはアニメ化やドラマ化、映画化などの「メディアミックス」が増えていること。“5時9時”は2015年、石原さとみ&山下智久主演でドラマ化されました。産みの親としてはどう見ましたか?