◆工業社会型システムの改革も不可欠
組織もまた「工業社会仕様」のままだ。特に大企業や伝統的な企業では中間管理職の比率が高く、組織の階層数も多い。いっときグループ制の導入や組織のフラット化(階層の削減)が図られたが、思ったほど浸透しない。それどころか、いろいろな理由をつけて元に戻す動きもあるくらいだ。その影響で、現場や第一線で働く人たちへの権限委譲も進んでいない。
また、あいかわらず集団主義で個人の仕事の分担や権限・責任が不明確である。そのため仕事の効率化や成果向上のモチベーションが生まれにくいし、テレワークや副業容認の障害にもなっている。
さらに終身雇用を前提にした雇用制度の限界もある。周知のようにアメリカや中国などでは、情報・ソフト系企業を中心に転職や独立・起業が普通に行われており、それが経済の発展と社会の活力の源泉となっている。
わが国でも最近は若年層を中心に転職や独立に対する抵抗感が薄れており、実際に雇用が流動化する兆しもある。問題は転職や独立を後押しする、少なくともそれが不利にならないような社会的システムづくりが遅れていることである。法律や税、社会保障などの制度改革は喫緊の課題である。
「働き方改革」は労働時間を減らし休暇を増やすことばかりに目がいきがちだが、それを可能にするためにも、生産性向上への本格的な取り組みが必要だということを忘れてはいけない。