国内

「道具屋」が手掛ける裏社会への人材派遣とそのニーズ

繁華街にはさまざまな素性の人間が集まる

「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中の『ハスリンボーイ』(“ハスリン”という言葉は「非合法商売」を指す)原作を担当する草下シンヤ氏が題材に選んだのは、「道具屋」という裏稼業。裏社会のパイプ役とも呼ばれるこの仕事をなぜ選んだかと言えば、その裏稼業を通して、さまざまな“裏のニーズ”が見えてくるからだという。その内実について、草下氏がレポートする。

 * * *
 今年4月、携帯電話の通話に必要なSIMカードを不正に譲り渡したとして、警視庁捜査2課は携帯電話不正利用防止法違反で、2人を逮捕した。昨年3月以降、2人が扱ったSIMカードを使った詐欺事件が全国で少なくとも十数件はあり、被害額は6000万円以上。捜査2課は、犯罪グループへの他人名義のSIMカードを供給する「道具屋」として、入手経路を調べているという。

 このような事件は氷山の一角に過ぎない。しかも道具屋は、この事件のように足がつかない携帯や架空口座などの「モノ」を用意して取引相手に渡すだけではなく、さまざまな裏の業務のために「ヒト」を斡旋することもあるという。レポート第1回(8月15日配信)で紹介したフリーの道具屋である私の友人の山崎(40歳・仮名)にさらに話を聞いた。

「まず依頼があるとすれば、出し子や掛け子の斡旋なんかがあるよね」

 特殊詐欺の「出し子」(振り込め詐欺で口座に振り込まれたお金を引き出す役割の者)や「掛け子」(振り込め詐欺などで電話をかけてだます役割の者)の斡旋では、紹介した人間が稼いだ金額の何パーセントかが支払われる。また、1人あたりいくらという取り決めで紹介し、報酬を得るやり方もある。知人の暴力団員などから「今度、こういうヤマがあるんだけど何人か手配してくれないか?」などと依頼されるという。

 今年5月29日までに警視庁組織犯罪対策4課が、金融庁職員や警察官らを装って、埼玉県の80歳女性ら4人から現金を詐取した容疑などで17人を逮捕。そのうちの一部が調べに対して、指定暴力団山口組の2次団体幹部にだまし取った金が流れていると供述したため、2次団体事務所に詐欺などの疑いで家宅捜索が入った。17人の大半は詐欺電話の「掛け子」で、この組の幹部らが統括役だった疑いがあるとみているという。

 もちろん、この事件に彼が関係しているわけではないが、その17人がどのように集められたかと言えば、山崎のような存在が暗躍していたに違いない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

12月9日に亡くなった小倉智昭さん
【仕事こそ人生でも最後は妻と…】小倉智昭さん、40年以上連れ添った夫婦の“心地よい距離感” 約1年前から別居も“夫婦のしあわせな日々”が再スタートしていた
女性セブン
去就が注目される甲斐拓也(時事通信フォト)
FA宣言した甲斐拓也に辛口評価 レジェンド・江本孟紀氏が首を傾げた「なんでキャッチャーはみんな同じフォームなのか」
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
NBAレイカーズの試合観戦に訪れた大谷翔平と真美子さん(AFP=時事)
《真美子夫人との誕生日デートが話題》大谷翔平が夫婦まるごと高い好感度を維持できるワケ「腕時計は8万円SEIKO」「誕生日プレゼントは実用性重視」  
NEWSポストセブン
元夫の親友と授かり再婚をした古閑美保(時事通信フォト)
女子ゴルフ・古閑美保が“元夫の親友”と授かり再婚 過去の路上ハグで“略奪愛”疑惑浮上するもきっぱり否定、けじめをつけた上で交際に発展
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
12月9日に亡くなった小倉智昭さん
小倉智昭さん、新たながんが見つかる度に口にしていた“初期対応”への後悔 「どうして膀胱を全部取るという選択をしなかったのか…」
女性セブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン