しかしその一方で、「暑さ対策はまだ不十分」という意見もあり、「この時期にマラソンを行うこと自体が危険」と警鐘を鳴らす専門家も少なくない。
往年のオリンピックファンやマラソンファンならば、1984年ロサンゼルスオリンピックの女子マラソンで、スイスのガブリエラ・アンデルセンが熱中症に陥り、ふらふらになりながらゴールにたどり着いたシーンを覚えているだろう。あの姿は感動的な名場面として多くのファンの記憶に残ったが、一歩間違えれば命を落とす危険もあった。ああした姿は美化されるべきものではない。
東京オリンピックのマラソン競技を中止したり延期したりすることは、もはや現実的ではない。しかし、選手が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境で、レースが滞りなく行われることを願わずにはいられない。