確かに先日、近所の夏祭りで買ったたこ焼きは1パック500円。6個しか入っていないのにタコはやたらと小さく、生地は生煮えで粉っぽく、まずいどころか食えない代物だった。だが別の屋台で買ったチヂミのほうは焼き加減も味も抜群だった。
「ここで自分の出番だ。売上の2割は渡すから、その場所をよこせと話をつける。すると相手は、自分らはたこ焼き屋と焼きそば屋をやるから、それとかぶらないならと注文をつけてくる。そんなのはOK、いくらでもできる話だ。探せばいいんだから」
探せばいい? 名義を借りてテキ屋の場所を借り、代理人でも使ってやるという話なのか…?
「先にやっているやつらと、かぶらないものをやらないといけない。でも技術のないものはできない。綿菓子はどれだけ少ないザラメで、どれだけ大きくてフワフワした綿菓子を作るかに技術がいるわけよ。だけど韓国人のおばちゃんをつかまえて、チャプチェ作って、プルコギ作ってといえばできちゃう。だから韓国人や中国人、インド人やトルコ人、外国人の屋台が増えるんだ」
元組長が自分の箸で網からカルビをつまみ上げようとすると、若い衆が慌ててトングで肉を挟んで皿にのせた。
「外国人は自分たちみたいのから話をふられ、テキ屋をやって儲けるんだよ。もちろん、全部が全部そうではないよ。彼らは一般人で暴力団ではないからね。それにやつらは悪さはしない。俺たちが面倒を見ているからね」
元組長はサンチュの葉でカルビを巻くと、口の中に放り込んだ。
そういうからくりがあったのか…。では、テキ屋の儲けというのはどれくらいなのだろうか?
「プルコギならコストコで1キロ400円の肉を買ってきて炒めて、1皿500円で売れば儲かりますよ」
若い衆が満面の笑顔を見せて答えてくれた。
「5倍ですよ、5倍! こんなにボロい商売はありません」
実際に餃子、焼き肉、チヂミの屋台を出したというが、それがどこの祭りだったかは、ここでは明かせない。
そこですかさず元組長が口を挟む。
「まあ残念なことに、そうやって日本の昔ながらの祭りの風景が壊されていくってことですよ」
あくまでこれは彼らの論理。壊されているのか、壊しているのか、立場が変われば見方も変わる。それでも、日本の昔ながらの祭りの風景を懐かしく大切に思う気持ちは皆同じだ。
徳島市では一方的に市を中心とする実行委員会が阿波踊りの総踊り中止を発表し、それに反発した踊り手団体が総踊りを決行、市長が遺憾の意を表明した。今や、あちこちで昔ながらの祭りの風景が変わっていく。