2003年には、東京都立の養護学校で、人形を使ってセックスのやり方を教える授業が行なわれていることが都議会で議題に上がり、大問題になった。
「同年の教科書検定で、“ペニスやワギナは学術用語ではない”と指摘され、小学校の保健教科書から姿を消しました(2006年には中学、2007年には高校の保健体育の教科書からも削除)。
また、セックスを意味する『性交』を中学校では『性的接触』と言うようになりました。現在の中学の学習指導要領では、“妊娠の経過を取り扱わない”とされているため、“性的接触”がなにか説明されていません。過去のバッシングが尾を引き、10年以上も性教育が硬直化しているのが実情です」(茂木氏)
こうした現状に対し、一部の自治体では独自の取り組みを実施している。埼玉県川越市で小学4年生を対象に性虐待を防ぐための授業を実施している産婦人科医の高橋幸子氏が語る。
「水着で隠している部分を“プライベートゾーン”と名付け、人に触らせてはいけないことや触られた際に周囲へ伝える重要性を説いています。同時に性交についても説明するため、授業参観にきた保護者に『10歳の子どもに早すぎませんか』と驚かれます。しかし、ユネスコが提示する世界の性教育の基準でも“プライベートゾーン”に関する教育は5~8歳が適切となっています。日本でも性虐待を受けている子どもの多くは幼少期から受け続けているケースが多く、決して早いとは思いません」