そこから一回り以上年を重ねたハナを主人公に据えた著者は、刺激的なタイトルにどんな思いを込めたのか。内館氏に聞いた。
「『終わった人』の後が『すぐ死ぬんだから』というのは強烈だとずいぶん言われましたよ(笑い)。
この言葉は、実際に私が後期高齢者の方と話して何度も耳にしたものです。娘や嫁から“もうちょっと綺麗な格好をしたら”と言われても、反射的に“いやいや楽が一番。すぐ死ぬんだから”と返す。まるで、手を抜くための免罪符のように使われている。私には、この一言が今の老人を老人たらしめているように思えたんです。
確かに、どんなに若くいようとしても、78歳のハナには忍び寄るものがある。気を緩めるとふと出てきてしまいそうな“すぐ死ぬんだから”という言葉に、それでも抗うハナの姿を見せたかった」
※週刊ポスト2018年9月14日号