国内

あらゆる詐欺を生業としてきた男が還暦を前に後悔する理由

病気をきっかけに改心し夫婦で穏やかな老後を送るはずが…

 病は治るが癖は治らぬというが、犯罪についても似たようなことが言える。詐欺のニュースで逮捕された容疑者の名前を調べると、若い頃から同じような詐欺を繰り返していることが少なくない。引退を決意したときになって、家族も詐欺以外の生き方を無くしてしまったことへの後悔を語る男の告白を、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
「正直、やめるタイミングを見失ったという感じでしょうか。妻も知っているというか……妻もシゴトを始めてしまい……」

 東京都内に住む宮本浩介さん(仮名・50代後半)は、古くは電話加入権融資からリフォーム詐欺、最近ではリゾート地購入権詐欺や投資詐欺などあらゆる「詐欺」を生業としてきた。書類送検されたことは数あれど「ブタ箱(※留置場)にぶち込まれたことはない」(宮本さん)というのが、酒の席での自慢話だ。債務整理や自己破産も経験したが、これまで被害者に弁済した金はゼロだ。

 妻や妻の親族らと共謀し、資産だけはどうにか保全してきたという。今は「新たな仕事」を模索中だというが、本音の部分でいえば「もっと正直に生きてきたかった」と感じているという。

 宮本さんはなぜ詐欺師となり、やめられなかったのか。

「遡れば、きっかけは1980年代後半のバブル経験です。大学を出て不動産会社に就職し、年収は3000万を超えていました。通勤は会社から出るタクシーチケットで、飲みも遊びも全部会社の経費。年に三回も社員旅行があった。でも、会社は裏で“架空の土地取引”などを行い、損失が出たと見せかけて脱税もしていた。ただ、それが最後までバレなかった。バレなきゃやらないと損でしょ、という感覚はここで培われたのかもしれない……」(宮本さん)

 その後、バブルが弾けると会社はあっさり倒産。突然、放り出された社員は路頭に迷うか、と思われたが違った。全員がバブルでおいしい思いをしてきた連中だ。高い生活水準を維持すべく、元社員が一丸となって立ち上げた会社こそが「詐欺の総合商社」ともいえる会社だったのだ。

「固定電話を持っている人々に融資するという仕事が最初でした。今でいう少額の闇金です。1990年代には自家用車融資、090金融もやりましたが、警察など当局の縛りがきつくなってきてからは、ホンモノの詐欺に手を出しました。最初は金融がらみの詐欺。債券や権利書、手形をだまし取る”パクリ屋”から始まって、頭を使わないリフォーム詐欺、投資詐欺……。我ながらいろいろやってきたなあと思います」(宮本さん)

関連キーワード

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン