日本はそれらを参考にして繁栄の方程式を想定し、都道府県や市区町村の線引きを越えた地方振興プランを策定して世界から人、カネ、モノ、企業、アイデアを呼び込まなければならないのだ。それを担う役所の名称も「地方振興省」なり「地方発展省」なり、本来の役割に見合ったものにすべきである。
もう一つの総務省の大きな問題は旧郵政省が握っていた通信分野だ。前述したように、2001年の橋本行革当時は総務省に外局として郵政事業庁が設置されたが、2003年に廃止されて日本郵政公社が設立され、同公社も2007年の郵政民営化で消滅した。このため現在の総務省にある旧郵政省の機能は、ICT(情報通信技術)の研究開発や海外展開の推進などを担当する国際戦略局、放送のデジタル化などを受け持つ情報流通行政局、電気通信事業の競争促進や電波の有効利用などに取り組む総合通信基盤局の三つになっている。
しかし、ICTや電波は21世紀の日本にとって最も重要な領域であり、総務省の局だけが担当しているようでは世界に太刀打ちできない。かつて私はマレーシアのマハティール首相のアドバイザーを務めていた時、マルチメディアによる情報立国という国家戦略を担う役所としてサイバー省を創設したが、日本も旧郵政省の機能は総務省から切り離し、ICTに加えてIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったサイバー社会の最先端技術を専門に所管する「情報通信省(サイバー省)」を新設すべきである。
自民党総裁選出馬を断念した野田聖子総務相は「世界標準の国」を目指すという政策を発表しているが、本当に世界標準に合わせるのであれば、日本はサイバー社会の徹底的な規制緩和に取り組む必要がある。なぜなら、今この領域では規制がほとんどない中国などがスマホのQR決済をはじめとする新しい技術やサービスを次々と生み出して世界中をひっくり返そうとしているからだ。これに対抗していくには、日本も国策としてサイバー戦略を推し進め、規制でがんじがらめの“ガラパゴス状態”から脱しなければならないのだ。
※週刊ポスト2018年9月21・28日号