「吹奏楽部でも名門の大阪桐蔭は、どちらかをやめるという選択をしませんでした。どちらもやる。それができる実力とチームワークを持っている学校なんです」(同前)

 8月21日、甲子園決勝当日。吹奏楽部の部員たちは早朝に集まり、午後からのコンサートのためのリハーサルをした。その後、甲子園へ移動。試合の最後まで演奏をやりきり、優勝の喜びを分かち合った。

 余韻に浸る間もなく、大急ぎで尼崎のコンサート会場へ移動。その日のコンサートも大成功を収めた。

 さらに、翌日は名古屋でのコンサート。その後、野球部の凱旋のために学校で演奏を披露すると、その3日後には、関西吹奏楽コンクールの本番を迎え、見事全国大会への出場を決めたのだ。この驚異的なスケジュールを、生徒たちは軽やかにこなし、結果を出した。

 ちなみに大阪桐蔭高校吹奏楽部は、学力向上にも努力を惜しまないことで有名だ。

「熱心な部活動にもかかわらず、高い成績をキープし続ける生徒が数多くいます。昨今の吹奏楽部は封建的な上下関係ではなく、3年生が雑用をやったりして慣れない1年生をフォローしたり、練習時間も短く効率の良さが重視されるようになってきています」(オザワ部長)

 部活動の中で自分のできることや役割を見出し、仲間との信頼を築き、情熱を傾ける高校生たち。彼らの持つパワーは計り知れない。

【プロフィール】
なかい・ゆりこ/1977年兵庫県出身。8月に上梓した『20歳のソウル』が話題を呼ぶ。劇作家・演出家・演技指導講師。1996年、神戸で旗揚げされたガールズ劇団・TAKE IT EASY!に座付き作家として入団。2005年に活動拠点を関西から東京へと移す。2010年、劇団中井組の座付き作家・演出家に就任し、2013年まで活動。2018年2月にmosaiqueを結成。

おざわぶちょう/日本でただひとりの吹奏楽作家。1969年生まれ。神奈川県横須賀市出身。県立横須賀高校を経て、早稲田大学第一文学部文芸専修卒。在学中は芥川賞作家・三田誠広に師事。『一球入魂! 一音入魂! 甲子園に響け!熱援ブラバン・ダイアリー』(学研プラス)など著書多数。吹奏楽CDのプロデュース・ライナーノーツ執筆、司会、講演など幅広く活動している。Twitterアカウントは@SuisouAruaru

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