さて、江東区の湾岸エリアでは今、そこかしこから槌音が聞こえてくる。五輪の競技場や新築マンションの建設工事が進んでいるのだ。

 五輪開催決定から5年。盛り上がったブームの熱は未だに冷めていない。このエリアのタワーマンションは、ほとんどが新築時より値上がりしていて、私から見れば「ありえない」価格で売り出されていたりする。

 成約事例を見ていると「そこそこ」の価格で売買されているマンションももちろんあるが、かなり不自然な価格だと思う物件は多い。このエリアのタワーマンションが、文京区の山手線内で分譲されている板状型マンションと坪単価がほとんど変わらなくなっているのだから。

 江東区の湾岸エリアは、豊洲や辰巳には地下鉄の有楽町線が通っているが、有明はりんかい線と新交通システムの「ゆりかもめ」しかない。りんかい線は地下鉄に比べて運行本数が少なく、都心への接続もよくない。ゆりかもめに至っては、不動産業界ではバス便以下の扱いになっている。

 いわば支線沿線としか評価できない有明エリアの新築マンションが、山手線内の文京区価格とさほど差がない、というのも不自然な現象ではなかろうか。

 湾岸エリアには五輪開催以来、「将来的に発展する」という空気に覆われている。その空気が確かなものならばよいのだが、それは多分にフワっとしたものだ。何といっても五輪閉幕以降の未来がよく見えていない。

 特に交通の便が悪い有明エリアの未来が危ういと思われる。現在、りんかい線の「国際展示場」駅を最寄りとする場所で、大規模なタワーマンションの建設も進められている。建物が完成するのは今から1年先。入居は五輪開催前となるはずだが、今の販売ペースなら竣工時までに完売しないことはほぼ確実だ。

 また、今のままでは来年10月、消費税の増税が行われる。消費税は3%から5%、5%から8%に引き上げられた時には必ずリセッション(景気後退)が発生した。マンション市場では「反動減」という売り上げ不振に見舞われる。

 じつは前回8%に引き上げられた時にも、新築マンション市場はこの反動減に陥って著しい販売不振となった。しかし、黒田日銀総裁が異次元金融緩和の第2弾(黒田バズーカ2)を発動したことで乗り切り、その後のマンション市場には“局地バブル”がやってきた。

 ところが、このままでは来年の消費税増税時に黒田氏のバズーカには撃つべき弾が残っていない。金利はゼロ%なのだ。これよりは下げようがない。

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