国内

仕事量が多すぎて疲弊する教師たち 月80時間残業もあたり前

教員の離職理由と「理想と現実のギャップ」調査

 1970年代後半から1980年代前半にかけ、第2次ベビーブームの子供たちの就学に合わせて大量に採用された新任教師たち。長年にわたって教育現場を支えてきた彼らが、今年、定年退職のピークを迎えた。ベテラン教師が大量に現場から姿を消す一方で、ゆとり教育を受けて育った「ゆとり教師」が激増。

 さらに過酷な教師という職業を希望する学生が減少したことで採用倍率も下がり、その結果「教師の質の低下」も囁かれている。公立小学校の教員採用試験の倍率は2000年度は12.5倍で、2017年度は3.5倍に激減。一般に倍率が3倍を切ると合格者の質が担保できないといわれているという。

 そんななか、疲弊が目立つのはベテランと若手に囲まれた30~40代の中堅教師だ。教育雑誌『お・は』の編集人で、小学校を定年退職後、非常勤で教師を続ける岡崎勝さんが言う。

「もともとこの世代は、就職氷河期と児童、生徒数減少の影響で採用が少なかった。それでいて退職で激減したベテランと増加する20代の狭間で仕事量が増えて、心労が重なっているんです。特に新人教師が“登校拒否”を起こしたり病気になったりすると『指導の仕方が悪い』として、指導する立場にある中堅教師への風当たりが強まる。それで心身を病んでしまうケースが目立ちます」

 教育現場からは、中堅教師の悲鳴が聞こえる。関東地方にある小学校の男性教師(33才)が語る。

「うちの学校は40代が極端に少なく、1年生から6年生までの主任は1人をのぞいて全員30代です。小学校は主任と担任を兼任するので、自分のクラスを見ながら学年全体も見る必要があり、負担が重い。30~40代はプライベートでも子育てが忙しかったり、親の介護が始まったりで生活が変化しますが、今の職場環境では到底プライベートに気を配る時間は持てません」

 関西地方の小学校の女性教師(30才)は「20代のしわ寄せが来るのは30代です」と憤る。

「今一緒に学年を持っている新卒がとんでもない教師で、時間を守らず授業もめちゃくちゃ。体調管理ができずすぐ風邪をひくし、コミュニケーションも取れません。そのくせ『嫌なことは嫌』と主張して部活の顧問を引き受けないので30代にお鉢が回る。確かに新人が困っていたら先輩が面倒を見るべきだけど、うちの学校は30代が異様に忙しく、新人のフォローをしたくても、とても余裕がないんです」

 一方で20代にも言い分がある。東海地方の小学校の女性教師(25才)が話す。

「普通の企業なら研修期間がありますが、小学校は新卒でも4月から担任を持って『はい、1人で頑張ってね』です。小学校の教師は22才も59才も同じスキルを求められるので正直つらいけど、責任があるから投げ出すわけにはいきません。さらに、30代や40代の先輩教師に相談したくても、あまりに忙しそうなので声をかけられないんです」

 授業でも難しさを感じたと、この女性教師が続ける。

「私の実力不足もありますが、授業は本当に大変。『これをしましょう』と教室で言っても子供たちから無視され、おしゃべりが止まりませんでした。“女性の新卒1年目で担任を持ったらほとんどが学級崩壊する”と言われるほどです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン