医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏

 リハビリを行う専門家である理学療法士も関東で不足している。最近のリハビリは、怪我や脳卒中の回復期だけでなく、心筋梗塞や呼吸器疾患、さらにはがんの手術後などにも行われるようになり、その守備範囲は拡大している。理学療法士が少なければ、適切なリハビリが行えないせいで、寝たきり患者が増えることも考えられる。

 関東で医師数を増やそうにもライバルを増やしたくない日本医師会がなかなか首を縦に振らないし、看護師、理学療法士の養成も遅きに失している。今後団塊世代が後期高齢者となって需要が激増すると、医師が少し増えたくらいでは大きく改善する見込みはない。

 さらに、医療先進地の西日本では、最近新たな動きがある。遠隔画像診断の技術を確立した、広島にあるエムネスという医療ベンチャーは医療とITを融合させて新たなサービスを展開しており、そこに目を付けた米グーグルは共同で日本での遠隔診断事業を進めようとしている。

 こうした事例には事欠かないほど、時代は動いている。少なくとも医療に関しては「首都圏一極集中」など幻想にすぎないことを認識するべきだ。

●かみ・まさひろ/1968年兵庫県生まれ。1993年、東京大学医学部卒業。1999年、同大学大学院医学系研究科博士課程修了。東京大学医科学研究所特任教授などを経て2016年よりNPO法人医療ガバナンス研究所を立ち上げ、研究活動を続けている。『日本の医療格差は9倍』(光文社新書)、『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)など著書多数。

※SAPIO2018年9・10月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《私が撮られてしまい…》永野芽郁がドラマ『キャスター』打ち上げで“自虐スピーチ”、自ら会場を和ませる一幕も【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
(SNSより)
「誰かが私を殺そうとしているかも…」SNS配信中に女性インフルエンサー撃たれる、性別を理由に殺害する“フェミサイド事件”か【メキシコ・ライバー殺害事件】
NEWSポストセブン
電撃引退を発表した西内まりや(時事通信)
電撃引退の西内まりや、直前の「地上波復帰CMオファー」も断っていた…「身内のトラブル」で身を引いた「強烈な覚悟」
NEWSポストセブン
女性2人組によるYouTubeチャンネル「びっちちゃん。」
《2人組YouTuber「びっちちゃん。」インタビュー》経験人数800人超え&100人超えでも“病まない”ワケ「依存心がないのって、たぶん自分のことが好きだから」
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、大学進学で変化する“親子の距離” 秋篠宮ご夫妻は筑波大学入学式を欠席、「9月の成年式を節目に子離れしなくては…」紀子さまは複雑な心境か
女性セブン
品川区にある碑文谷一家本部。ドアの側に掲示スペースがある
有名ヤクザ組織が再び“義憤文”「ストーカーを撲滅する覚悟」張り出した理由を直撃すると… 半年前には「闇バイト強盗に断固たる処置」で話題に
NEWSポストセブン
現在は5人がそれぞれの道を歩んでいる(撮影/小澤正朗)
《再集結で再注目》CHA-CHAが男性アイドル史に残した“もうひとつの伝説”「お笑いができるアイドル」の先駆者だった
NEWSポストセブン
『THE SECOND』総合演出の日置祐貴氏(撮影/山口京和)
【漫才賞レースTHE SECOND】第3回大会はフジテレビ問題の逆境で「開催中止の可能性もゼロではないと思っていた」 番組の総合演出が語る苦悩と番組への思い
NEWSポストセブン
永野芽郁の不倫騒動の行方は…
《『キャスター』打ち上げ、永野芽郁が参加》写真と動画撮影NGの厳戒態勢 田中圭との不倫騒動のなかで“決め込んだ覚悟”見せる
NEWSポストセブン
電撃の芸能界引退を発表した西内まりや(時事通信)
《西内まりやが電撃引退》身内にトラブルが発覚…モデルを務める姉のSNSに“不穏な異変”「一緒に映っている写真が…」
NEWSポストセブン
入院された上皇さまの付き添いをする美智子さま(2024年3月、長野県軽井沢町。撮影/JMPA)
美智子さま、入院された上皇さまのために連日300分近い長時間の付き添い 並大抵ではない“支える”という一念、雅子さまへと受け継がれる“一途な愛”
女性セブン
交際が伝えられていた元乃木坂46・白石麻衣(32)とtimelesz・菊池風磨(30)
《“結婚は5年封印”受け入れる献身》白石麻衣、菊池風磨の自宅マンションに「黒ずくめ変装」の通い愛、「子供好き」な本人が胸に秘めた思い
NEWSポストセブン