声を上げた榊原氏
「あの損失隠し事件があったにもかかわらず、オリンパスの隠蔽する体質は変わっていません。私は裁判を起こしていますが、このままでは問題が知られることのないまま終わってしまう。そこで、お話しすることに決めました」
告発のきっかけとなった“騒動”は、昨年の暮れに東京・新宿のオリンパス本社で起きた。高層ビルの15階に怒声が響き渡る。
「メールを停止するんですよ、この人!」
数百人もの社員が耳をそばだてた。怒声の主は榊原氏で、「この人」とは彼の上司である法務部長のことだ。オリンパスが中国・深センで地元マフィアとつながりを持ち、そのルートを経由して税関関係者に賄賂を贈り、経営上の問題を処理してもらっていた疑いが強まった(※注2)。
【※注2/オリンパスの深セン子会社は2006年、中国当局から実際の在庫と理論上の在庫が大きく食い違うと指摘され、数百億円もの罰金を命じられる可能性が生じた。その問題の処理を現地の経営コンサルタントに依頼し罰金は免れたが、後に中国マフィアである疑いが浮上。支払う報酬の一部が、賄賂として中国当局者に流れた疑惑も指摘された】
この「深セン疑惑」については、深刻な法的な問題があるとの声が社内から上がり、海外の複数の法律事務所に見解を求めたところ、特に米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)に違反する恐れが濃厚との回答が寄せられた。最悪の場合、数百億円もの罰金の支払いを求められる恐れがある。榊原氏らが強硬に主張したのは、ただ一点。「法律違反のリスクが大きいため、きちんと対処すべし」──。