『一緒にお墓に入ろう』著者の江上剛さん
井上:死後離婚のかたもいらっしゃれば、「私は私でこっちに入っちゃうわ」と力強く決めてる人も少数ながらいて、この数はこれからどんどん増えていくんじゃないかなという気がしています。
江上:海洋散骨、樹木葬、共同墓、永代供養墓、都心のビルにあるマンション型納骨堂。さまざまなカタチを取材した井上さんは、どれがおすすめですか、もし自分が選ぶとしたらどれがいいと思いました?
井上:ああ、困った、それを聞かれちゃいますか(笑い)。
江上:ビルの中にある自動搬送式の納骨堂にはちょっと批判的な感じがあったけど。
井上:えっ、そうですか!? いえ、そうでもないですよ。駅近なのはいいなと思いました。
――『いまどきの納骨堂』の「はじめに」にこうある。〈目下、首都圏には、建設中のところも含めると約30か所に及び、完売すれば12万~15万人が使用することになるらしい〉。 8か所の都立霊園の使用者数は約28万人。都心に納骨堂が登場したのは1990年代後半だから、なんと20年で納骨堂使用者が墓地使用者の半数に達したことになる。すごい勢いだ。納骨堂を見に行った井上さんはその印象をこう書く。
〈美術館や高級マンション、あるいはオフィスビルのように見える建物で、中に「お墓」があるとは到底思えない〉。それは〈かつてのお墓につきものだった、どこか暗くて、うら寂しい空気など皆無だ〉と。
井上:駅から数分、線香いらず、花いらず、手ぶらでひょいと立ち寄ってお参りできる手軽さがなにより魅力だと思いました。ただ長期的に考えると、手放しでは誉められない点もあって…。例えば運営会社が倒産することだってあるでしょうし、マンションと一緒で、ビルの老朽化に伴い、1万5000円だった年間管理料が「来月から5万5000円になります」といった突然の値上げ通知が舞い込むことだってあり得る。耐震構造になっているといっても、鉄筋の構造物は“永遠”ではないですからね。
江上:小説では、夫婦で息子にすすめられて都心の納骨堂を見に行き、気に入るという設定にしましたけれど、ぼくも書きながら思いましたよ。これ、故障して出てこなかったらどうするんだと。ビルの納骨堂というのは遺骨の立体駐車場でしょう。立体駐車場には定期的なメンテナンスが絶対に必要ですからね。
井上:どうしてビル型納骨堂を気に入るという設定にされたんですか。
江上:今、外資の大手投資会社が都心の納骨堂ビジネスに投資している。利益に対して非情な彼らが乗り出すということは、確実に儲かるということ。そういった背景もちょっと書いておきたかったんです。