「EUでは景気が後退して労働力需要が落ちた結果、外国人労働者が真っ先に首を切られました。彼らが失業すると、政府は失業対策を行ったり、公的住宅を建設したりしなくてはなりませんでした。日本でも同様のことが起きれば、そのコストは国の財政を圧迫します」(森永氏)
景気が悪くなったら母国へ帰ってもらえばいい、という虫のいい話は通用しない。例えば景気が良い時代に大量のトルコ人を受け入れたドイツでは、母国語を上手に喋れないトルコ人の子供がたくさん生まれた。
「ドイツ政府は移民を本国に戻す支援策としてトルコ語教室を開設したり、トルコで家を建てる場合の資金援助をしたりしましたが、それでも帰国した人はそれほど多くなかった。一度受け入れたら元の状態に戻すことは非常に難しいのです」(森永氏)
EUから学ぶ最大の教訓はネオナチをはじめとする「極右勢力の台頭」である。
「失業、経済停滞、犯罪増加など、すべての悪事の根源は外国人にあるとして、EU各国で反移民を掲げる極右政党が台頭し、差別や社会不安が増しています。日本でも政府が安易に移民を解禁すれば、排外主義が燃え盛る怖れがあります」(森永氏)
現にドイツのメルケル首相が政権崩壊を避けるため難民らの流入抑制策を決定し、EU圏4番目の経済大国であるイタリアで極右・ポピュリズムの連立与党が政権を担うなど、極右勢力が欧州を席巻している。
にもかかわらず、日本は同じ轍を踏もうとしている。森永氏は移民推進派が論拠とする「労働力不足」に疑問を呈す。