都内の大手私鉄社員・丸井和義さん(仮名・30代)も、鉄道各社が推し進める電子切符導入などの「効率化」と、それについていけない高齢客からの要望の「板挟み」にあっていると話す。

「すでに九割以上のお客様がパスモやスイカなどの非接触型ICカードの電子切符を使って電車を利用されていますが、高齢のお客様の一部は”使い方がわからない”ということで、窓口や券売機でたびたびトラブルになります」(丸井さん)

 朝夕のラッシュ時に高齢者が券売機で手間取り、他の客と口論になったり、電子切符のほうが従来の切符より数円安くなることについても、高齢客から「差別」と迫られるケースもあったという。また、これも「効率化」によって小中規模の駅では窓口が廃止されたこともあってか、駅員がおらず途方に暮れる高齢客のせいで混乱が生じている例もあるそうだ。そして、様々な業種で広がる「無人化」の現場では、次のようなトラブルも…。

「無人の“洗車場”や“駐車場”では、高齢のお客様にはシステムがわかりづらいようで、度々トラブルになっています」

 千葉県の郊外にある無人洗車場から「呼び出し」を食らったのは、とある休日の夕方の事。無人洗車機に「軽トラ」を突っ込んだ高齢男性からのクレームだったという。無人洗車場を運営する会社に勤める棚橋大輔さん(仮名・四十代)の話。

「無人洗車機には、一部対応できない車があります。四駆や軽トラです。その旨は洗車機の横に注意書きがあるはずなのですが、お読みになられていなかった…。こんな難しい機械なのに、案内人がいないのは“傲慢だ”ときつく叱られました」(棚橋さん)

 系列の無人有料駐車場でも、高齢者をめぐるトラブルは相次いでいる。そのほとんどが「料金が高い」というクレームによるものだが、当然のことだが、料金は看板などに示されている。にもかかわらず、クレームを入れる高齢客のほとんどが、説明書きを読んでいない。

 説明書きを読まない人は、年齢にかかわらず一定数いる。そして、提示されている情報を無視して自己主張する人も、高齢者でなくとも存在している。だが、高齢者はそのあとの主張の拠り所が違う。「老人なのだから、自分たちのしたいように合わせるのが当然だろう」という態度を崩さないのだ。

「そもそも駐車場なのに高すぎる。老人は車が必要なのだから駐車料金を安くするべき、など言われます。言いがかりですよね…」(棚橋さん)

 筆者も、朝の通勤ラッシュ時に行列に知らぬ顔で割り込んでいる高齢客を何度も目にしたことがある。サラリーマンとトラブルになり「敬老者なんだから敬え(※発言ママ)」と、高齢者自らが迫っていたこともあった。電車の車内でも、優先席に座っていた子連れの若い女性に説教をする高齢者だっている。若者や働き盛りの中年世代から見れば、これら高齢者の態度は「傲慢」という風にしか見えない。

「老人が起こす犯罪」といったテーマの本や記事も増え続けているが、それでは実際に65歳以上の高齢者の犯罪率が増加しているのかと言えば、実はそうではない。政府発行の「高齢社会白書(平成30年版)」によれば、検挙総数もこの十年でいえば、緩やかな右肩下がりである。ただ、唯一約三千件から六千件に倍増しているのが「粗暴犯数」だ。粗暴犯とは「暴力」や「傷害」、そして「脅迫」や「恐喝」の罪。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」