「高齢者の粗暴犯が増えている背景には、高齢者が店や若者とトラブルになることが増えた、という事実があります。もちろん、昭和の時代にもこうした事例はあったのでしょうが、母数の高齢者数が増えた分、目につきやすくなっている面はあります。東京では2012年、少年犯罪数を高齢者犯罪数が初めて上回りました。傷害や脅迫と言っても相手を小突くとか暴言とか、万引きなどに関しては貧困が原因でもありますが、かつては敬われていた老人たちに余裕がなくなり、社会にも不寛容になりがちで罪を犯す、というパターンは増えている印象です」
こう話すのは、大手紙警察庁担当記者。老人数の増加という要因と、老人の貧困による生きづらさ、そして生まれる「老人ヘイト」ともいわれる社会の老人への嫌悪感。このような負のサイクルにより、犯罪に走る老人を「目立たせる」事態を招いたのではないかと指摘する。
「なんでもかんでも老人に合わせてしまえば、社会は停滞してしまう。こっちは高い社会保障費を払って、老人を”飼って”いかなきゃいけないのに、冗談じゃありません。老人嫌いは今後も増えていくでしょうし、若者世代と中高年世代の間の溝は深くなり続けるばかり。俺たちが働かないとあなたたちは生きてさえいけないんだ、ということをわからせなければならないんじゃないですか?」
極端な持論を展開するのは、かつて「オレオレ詐欺」に手を染めていた男性だ。オレオレ詐欺を「現代のネズミ小僧」といって憚らない彼は、老人などの中高年世代を毛嫌いしている。自分を含めた若者世代に金が流れず、不遇な思いをしているのはすべて上の世代が「富を独占している」と考えているからだ。とはいえ、高齢者を非難する彼が、自分が得た利益を若者世代に再分配しているという話も聞こえてはこないのだが。
お互いがお互いの主張だけをしていても、筋も理屈も通らない。互いの不遇を、感情に任せて主張し続けた末に、我が国に待っているのは、どれほどに息苦しい日常なのだろうか。