ビジネス

「プロ経営者」次々と更迭 なぜ日本で活躍できないのか

RIZAPのCOO職を解かれた松本晃氏(写真右:時事通信フォト)

“雇われ社長”といえば聞こえは悪いが、近年、卓越した経営センスと輝かしい業績回復手腕で複数の企業をわたり歩く「プロ経営者」が日本企業で持て囃されてきた。しかし、ここにきて有名企業のプロ経営者が相次いで更迭される事態が起きた。伝統的な企業文化を重んじる日本では、プロ経営者が活躍できる土壌がないのか──。法政大学大学院の真壁昭夫教授がレポートする。

 * * *
 わが国では、経営の専門家である「プロ経営者」を登用する企業が増えてきた。その背景の一つに、従来の発想では環境変化に適応し収益を獲得することが難しくなってきたことがある。

 そうした状況下、住宅設備大手のLIXIL(リクシル)では、米GE(ゼネラル・エレクトリック)出身の藤森義明氏に続き、住友商事の瀬戸欣哉社長と、2代続けてプロ経営者が解任された。

 また、“結果にコミットする”でおなじみRIZAP(ライザップ)でも、COO(最高執行責任者)に招聘された元カルビーの松本晃氏が同職を解かれた。それを受け、「プロ経営者は日本企業には合わない」といった論評が注目を集めやすい。

 しかし、わが国の企業にプロ経営者は適さないと決めつけるのは早計だ。企業文化の影響は大きい。また、プロ経営者の登用は初期段階にある。判断するには今後の動向を見守る必要があるだろう。

◆わが国の伝統的な企業文化

 わが国の企業では、外部からプロ経営者を雇うよりも、内部昇進を重ねた人物を経営者に登用することが当たり前だった。それがわが国の企業文化だ。企業文化とは、企業における人々の行動様式、発想、価値の基準と考えればよい。

 終身雇用制度は、企業文化の良い例だろう。わが国では、新卒で企業に就職し年齢を重ねるごとに昇進と昇給を経る時代が長く続いた。多くの人が定年までその企業で働き続けることを当たり前としてきたはずだ。

 そして、ミスなく事務などをこなし役員からの評価の高い人物や他の部署との意見の調整(根回し)に長けた資質を持つ人物が、相対的に高く評価されることが多かった。わが国の企業は、長期の視点でゼネラリスト型の人材を育成することを重視してきたといえる。その中から将来の経営者が見出されてきた。今なお、この発想は多くの国内企業の経営に無視できない影響を与えている。

 第2次世界大戦後から1980年代後半の資産バブル(株式と不動産の価格が大きく上昇した経済状況)までは、基本的にわが国の経済成長率は右肩上がりだった。そのため、終身雇用制度に基づく企業経営が大きな問題に直面することはなかった。

 しかし、1990年代に入るとバブルが崩壊し、国内経済は低迷した。多くの日本企業が攻めよりも守りの経営を重視した。加えて、経済のグローバル化が進み、新興国企業の競争力が高まった。その中で、徐々に従来の企業経営の発想は通用しなくなった。それは1980年代に世界の半導体市場を席巻したわが国の電機メーカーのシェアが1990年代以降に大きく低下したことを見れば明らかだ。

関連記事

トピックス

12月9日に亡くなった小倉智昭さん
【仕事こそ人生でも最後は妻と…】小倉智昭さん、40年以上連れ添った夫婦の“心地よい距離感” 約1年前から別居も“夫婦のしあわせな日々”が再スタートしていた
女性セブン
去就が注目される甲斐拓也(時事通信フォト)
FA宣言した甲斐拓也に辛口評価 レジェンド・江本孟紀氏が首を傾げた「なんでキャッチャーはみんな同じフォームなのか」
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
NBAレイカーズの試合観戦に訪れた大谷翔平と真美子さん(AFP=時事)
《真美子夫人との誕生日デートが話題》大谷翔平が夫婦まるごと高い好感度を維持できるワケ「腕時計は8万円SEIKO」「誕生日プレゼントは実用性重視」  
NEWSポストセブン
元夫の親友と授かり再婚をした古閑美保(時事通信フォト)
女子ゴルフ・古閑美保が“元夫の親友”と授かり再婚 過去の路上ハグで“略奪愛”疑惑浮上するもきっぱり否定、けじめをつけた上で交際に発展
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
12月9日に亡くなった小倉智昭さん
小倉智昭さん、新たながんが見つかる度に口にしていた“初期対応”への後悔 「どうして膀胱を全部取るという選択をしなかったのか…」
女性セブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン