生活の場や家庭の内情を詳細に書かず、言葉の応酬、観念的なやりとりに徹した演劇的な造りである。新幹線、別荘、マンションの玄関口、駅、山奥のある家、と場所を移して会話が展開し、客人に出す料理は登場しても、ふだんの食卓は出てこない。「密室」や「愛憎」などのミステリー・アイテムがそろっていながら、殺人も刃傷沙汰も起きない。肉体的暴力ではなく、心の凶暴性がこじれていく。
読みながら、自分の心のドブさらいをするような、おぞましさを覚える。ぜひ、肝試しのつもりでお読みください!
※週刊ポスト2018年12月7日号