国内

若者層が共産党を“保守”、自民党を“リベラル”と見る理由

若者はデモを行う全共闘世代に共感できない AFLO

 若者達にとって増え続ける高齢者は、自分たちの幸福な世界を脅かす「難民」だと作家の橘玲氏は指摘する。その高齢者が支持するものは若者にとって「保守」であり、高齢者が「保守」だとみなすものを若者を「リベラル」だと見なすという逆転現象まで起きている。橘氏が解説する。

 * * *
 若者たちが求めるのは、年金などの社会保障制度を持続可能なように改革することだが、これはすなわち高齢者の既得権を破壊することだ。それに対して、「難民化」しつつある日本の高齢者層のなかには、なんの資産ももたず年金以外に収入のないひとたちが膨大にいる。このひとたちは年金が減額されると生きていけないので、どんなことをしてでも既得権を死守しなくてはならない。

 若者は高齢者を「排斥」しているのではなく、年金なしで自分たちはどうやって老後を生きていけばいいのかを知りたいと思っている。しかし政治家もリベラルな知識人も、もちろん当の高齢者も、この疑問に答えることができない。こうして日本の社会は、世代間で分裂していく。

 世論調査では、高齢者層が自民党を保守、共産党をリベラルと考えているのに対し、若者層は逆に、共産党を保守、自民党をリベラルと見なしている。しかしこの奇妙なねじれも、若者たちが「改革」を掲げる安倍政権を支持し、高齢者があらゆる改革を拒絶していると考えれば理解できるだろう。

 新聞やテレビなどのオールドメディアは、保守かリベラルかにかかわらず、いまや読者・視聴者の大半が高齢者になり、彼らが喜ぶ紙面や番組をつくるなかでどこも頑迷な守旧派になり果てている。高齢者を批判する内容は最大のタブーだ。若者が右傾化したのではなく、かつての「リベラル」が右傾化したことで、世代によって「右」と「左」が逆転してしまったのだ。

●たちばな・あきら/1959年生まれ。2002年国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。『言ってはいけない』(新潮新書)、『朝日ぎらい』(朝日新書)、『80’s エイティーズ』(太田出版)など著書多数。

※SAPIO2018年11・12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン