国内

「すっぽん刑事」が明かす、いい泥棒と悪い泥棒の違い

警察で言う「いい泥棒」とは?

 警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、警察内部でいう「いい泥棒」の意味を解説する。

 * * *
「いい泥棒を捕まえれば、しばらく楽ができる」

 そう語ったのは、仲間から「すっぽん」と呼ばれた元刑事だ。

 先日、何人もの元警察官が出ている警察あるある的な特番を見ていた時、盗犯係をしたことがあるという1人の元刑事が、泥棒の話題で「いい泥棒」という言葉を口にした。その言葉を聞いた時、「すっぽん刑事」のニヤッとした笑顔を思い出した。

 いつも署にいて、ほとんど休むことない。もそっとした印象ながらも一度食いついたら絶対に離さない、すっぽんさながらに犯人を追い続ける。そんな仕事ぶりから、彼についたあだ名は「すっぽん刑事」。

 ある強盗団を捜査していた朝のこと。当直していたはずのすっぽん刑事が、時間になっても出てこないことがあった。

「あれ、いない。どうしたんだろう?」

 同僚たちは不思議に思った。

 いつもなら、とっくにデスクについているはずの時間。捜査に出たわけでもない。デスクには、たばこがそのまま置かれていたからだ。

 おかしいと思った同僚が、彼が休んでいたはずの休憩室に見に行った。声をかけたが返事はない。すっぽん刑事は布団の中で気絶していたのだ。

「過労だよ、過労。捜査が立て込んでて、休みを取るどころじゃなかったんだ。呼ばれて、意識はうっすらとあったんだが、妙なもので身体がまるで動かない。起き上がれないんだよ。おまけに身体の力が抜けてしまって、脱糞してたんだよな」

 同僚に担がれ、休憩室から運び出され、署にあった風呂に入れられた。1人では歩けない、風呂にも入れないほど彼は疲労していた。着替えさせてもらい、警察の緊急車両で自宅へ送られ、そのまま床についたという。

 さすがのすっぽん刑事も数日間は休むだろう、同僚の誰もがそう思った。ところが翌朝、彼はいつもと変わらず出勤し、同僚たちを驚愕させた。体力勝負の警察官でも、すっぽん刑事の体力と精神力は半端なく、その熱心な仕事ぶりは部下たちから信頼された。すっぽん刑事が、犯人がそこにいると言えば、自分の読みより彼の読みを優先したというぐらいだ。

 そんな仕事一筋、休むことを知らないすっぽん刑事に「しばらく楽ができる」と笑顔で言わせた「いい泥棒」に興味がわいた。

「いい泥棒なんて、一般市民が聞いたら怒るよな」

 そう前置きしてから、彼は話し出した。

 泥棒にいいも悪いもない。絶対に悪い。だが警察には「いい泥棒」と「悪い泥棒」という警察独特の捉え方があるという。

「いい泥棒は、ひとつの事件で捕まっても他に余罪が200~300ぐらいあって、それを全部きれいさっぱり白状してくれる泥棒のこと。プロの泥棒だな。悪い泥棒は、1件か2件しか盗みをやっていない泥棒のことだ。世間的にはいい、悪いが逆なんだがね」

 いい悪いが警察官にとって逆になる理由は「原票」にある。

 原票とは、泥棒がいつ、どこに盗みに入ったのかという事件を記した票のことだ。事件数を多く挙げれば、それだけ原票も多くなり、自身の成績が上がる。原票は得点そのもの。“命みたいなもの”と例えた刑事もいれば、“現金と同じ”と表現した刑事もいる。それぐらい刑事にとって原票は重要だ。だから犯行件数が多い泥棒ほど、刑事にとっては一度に原票が稼げるいい泥棒ということになる。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト