GT-RやフェアレディZなど走りにはこだわっていたカルロス・ゴーン前会長
日産は果たして、ユーザーを楽しませるようなモデルを作っていないのだろうか。グローバルで見ると、商品戦略では結構アグレッシブなほうだ。
北米ではインフィニティブランドを中心に独創的なデザインのSUVを何モデルも出し、結構な人気を博している。ミドルクラスSUV「キャシュカイ」は欧州の同クラスの中でも人気ナンバーワンだ。中国では独自ブランド「ヴェヌーシア」がクルマのトレンドを機敏に捉える商品展開でユーザーに大受けしている。
問題は日本のユーザーを燃え立たせるようなエモーション系モデルがさっぱりなかったこと。世界に名をとどろかせた日本モデルは2007年に発売したスーパースポーツ「GT-R」くらいのものだ。
その他の日本向けのクルマにはノートとセレナがあるが、どちらも“白物家電”などと言われる実用一辺倒のモデルで、日産ならではという情感に欠ける。その他は東南アジア向けのミニカー「マーチ」、中国向けのコンパクトセダン「シルフィー」、北米向けの「フーガ」「スカイライン」等々、海外メインのものばかりだ。
会見で質問が飛び出した「日本軽視」とは、新技術を投入していないのではないかという意味ではなく、日本のユーザーの嗜好をないがしろにしているのではないかという意味だ。もちろん今後、大幅に縮小していく可能性が高い日本市場に今から力を入れるというのは、ビジネス上得策ではない。が、日本のユーザーが喜ぶクルマを作り、それをグローバル商品にするという事例がもう少しあってもいい。
ゴーン氏が去った後、日産にそういう期待は持てるのか。筆者はつい1か月ほど前、日産車で長距離テストドライブを行ったのだが、日産はかつて金看板としていたドライビングプレジャーにあふれるクルマづくりをやれる力をまだ十分に残しているというのが率直な印象だった。