「父親が地元の羽曳野で肉の仲買業を営んでおり、弟2人は山口組系の暴力団組員だった。羽曳野市を中心に、食肉とアンダーグラウンドの人脈を培う素地があった。そこを入り口に、畜産、建築、農林水産と、裏社会から政財界まで人脈を広げていった。鈴木宗男氏や松岡利勝氏ら農水族議員らを資金援助し、知事や地方議員をアゴで使うまでになり、農水省からは補助金も出させていた。
一方で、山口組五代目の渡辺芳則組長を“なべちゃん”と呼ぶほどの仲でした。表と裏の人脈を最大限利用していた」
農水族議員や農水省にとっても、浅田氏は得がたい存在になっていた。食肉分野は常に外国から輸入拡大を求められ、輸入割当など業界内部の調整は難しい。政治家も官僚も裏では、ひと睨みで業界を黙らせることができる浅田氏の“調整力”を頼りにした。浅田氏は、これらの人脈を使い、巨大公共事業も手中に収めていく。
飛ぶ鳥落とす勢いで事業を拡大させた浅田氏だが、皮肉にも自ら働きかけた食肉保護政策が原因で、失脚する。
当時、国の買い取り価格が高く設定されたために、買い取り対象外の安い輸入牛肉を「国産」と偽り国に高く買い取らせ、差額で儲ける「牛肉偽装事件」が数多く発生し、雪印など大手を含め多くの業者が破綻した。
浅田氏も業界最大規模の量を国に買い上げさせたうえ、全量焼却したが、1年後、大阪府警と大阪地検が合同でハンナンの捜査に乗り出し、食肉偽装で国から50億円を詐取した容疑で浅田氏をはじめ11人が逮捕された。
※週刊ポスト2018年12月7日号