実際、天皇は「理想の歩行速度」を続けられていたようだ。1996年12月~2007年6月まで侍従長として天皇・皇后に仕えた渡邉允氏は、著書でこう明かしている。
〈散歩といっても両陛下はずいぶん早足で歩かれます。宮殿の中で廊下を急いで歩かれたりすることがあると、年下の私の方が追いつくのにひと苦労するくらいです〉(『天皇家の執事 侍従長の十年半』)
元宮内庁職員で皇室ジャーナリストの山下晋司氏は、そうした歩行習慣によって鍛えられた筋力が“ある行事”での姿に現われていると語る。
「陛下の『お田植え』『お稲刈り』の映像を拝見すると驚きます。足場の悪い田んぼですが、陛下はどこにも掴まらずにしゃがみ、作業後はすっと立ち上がられます。その動作を何度も繰り返される。60代でもなかなかハードな動きだと思うのですが、80歳を超えられてもそれがお出来になるのは、感服いたします」
美智子皇后との出会いのきっかけとなった「テニス」も健康効果は高い。スポーツの延命効果に関する大規模疫学調査「コペンハーゲン心血管研究」によると、テニスをしていた人は運動不足の人に比べ、平均9.7年間も平均余命が長くなっていた。プレー中の運動量が適度であることに加え、対戦相手との駆け引きやパートナーとのコミュニケーションが伴う対人スポーツであることが「良質な運動」の理由と分析されている。