「まず、十二指腸潰瘍の名残がありました。すでに治っているものですが、ピロリ菌がいる可能性があるように見受けられます。胃には萎縮性胃炎というピロリ菌感染特有の胃の変化が見られます。ピロリ菌感染が原因で胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんになるといわれていますので、そのリスクがあると推測されます」
さらに大きな「問題」を指摘されたのは食道だった。
「正常ならばツルっとしている粘膜が炎症で腫れ、真ん中がえぐれた状態のところがあります。ただの炎症なのか悪性の早期のものなのかを判別中で、後日、結果が出ます」(柴田医師)
いささかショックを受けたが、体験取材がなければ気づかなかったことだから、幸運ととらえよう。
この検査では、通常の内視鏡カメラの映像が写し出されるモニターの他に、AIが搭載されたモニターがある。AIが胃がんの疑いがある場所を見つけると、0.02秒の反応速度で胃の画像に四角くマーキングされるという。
「胃がんが疑わしいところを見つける画像解析速度でいえば、人間の能力をはるかに上回る。また、医師が常に100%のパフォーマンスが出せるとは限らないので、AIが人の目では気づかなかった病変を拾い上げてくれる可能性がある。経験の浅い医師でもAIのアシストによって高い精度を維持できると考えられます」(柴田氏)
ただし、「AI内視鏡画像診断支援システム」は薬機法未承認品のため、検査中に患者がAIのマーキングした画像を直接見ながら解説を聞くことはできないという。