ビジネス

熱海復活は本物か 照準は団体客から「新世代個人客」へ

再び賑わいを取り戻しつつある熱海

 バブル崩壊以降、衰退の一途をたどっていた日本有数の温泉地・熱海だが、近年、街並みやホテルの再開発などによって見事復活を遂げつつあるという。果たして、人気復活は本物なのか。ホテル評論家の瀧澤信秋氏がレポートする。

 * * *
 近年、旅行の態様が変化した例として“団体から個人へ”というワードを耳にする。個室が並ぶホテルは、ある程度の客室数があれば団体客も受け入れられるし、もちろん個人客にもマッチした業態だ。

 他方、旅館はどうであろうか。高度成長期からバブル期に隆盛を誇ったのは、社員旅行、観光旅行を例とする大型の団体を受け入れる温泉地の大規模な施設であった。和室を中心とした客室は定員4名、6名、中には10名という大部屋も。大人数で利用できる大浴場に大宴会場、カラオケスナックにゲームセンターなど、団体客を想定した大型温泉観光旅館ともいえる施設だ。

 東京から団体客が大挙して押し寄せた温泉地が熱海であった。宿泊施設の活気もさることながら、熱海といえば夜の盛り場も賑やかで、男性諸氏にも人気の温泉地として名を馳せた。

 そんな熱海もバブル崩壊の影響をもろに受け観光客は激減。宿泊施設利用者数でみると、バブル崩壊直前の1991年には約440万人だったが、2002年度には300万人にも届かなかった。その後もリーマンショックや震災などが重なり、2011年度には約246万人と、20年前と比較して半減にも迫る減少となった。

 宿泊施設等の団体客増減が世の中の景気動向の判断材料にされることがある。景気に左右されるのも団体客といえるが、特に温泉地の大型施設にとっての生命線もまた団体客である。

 景気が衰退し団体客が減少したからといって、多くの施設では一朝一夕に個人客向け施設へ方向転換できる資金もなく、熱海では大型旅館を筆頭に宿泊施設の廃業が相次いだ。団体客依存の内在するリスク顕在化といえる。これは熱海に限ったことではなく、全国各地の温泉地でも同様のケースがみられたが、首都圏が大規模マーケットであった熱海の衰退は特に目立ち、温泉観光の衰退例として度々取り上げられた。

 そんな熱海がいま活況に沸いているという。2017年の市内宿泊客数をみるとバブル時には及ばないものの307万人余りで、前年比で4万5000人ほどの増加、3年連続で300万人を超えているという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン